2020 Fiscal Year Research-status Report
成人自閉スペクトラム症における神経基盤研究:臨床応用と統合失調症との異同の検討
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20K07986
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Research Institution | National Hospital Organization, Hizen Psychiatric Center |
Principal Investigator |
小田 祐子 独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター(臨床研究部), 臨床研究部, 医師 (70721265)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / ASD / 調整定常反応 / 脳波 / 機能的MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
近年自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)への関心と需要が高まっている一方で十分な生物学的研究が行われておらず、神経回路異常についてはほとんど未解明である。ASDと統合失調症(SC)は、操作的診断基準により異なる疾患として区別されているが、最近の疫学研究からは両疾患の病因・病態は重複している可能性が示唆されている。SCの有用なバイオマーカーとして期待されている指標として聴性定常反応(Auditory Steady State Response: ASSR)がある。操作的診断基準に よって区別されるASDとSCに生物学的基盤の重複の存在が示唆されれば、現在の疾患概念に影響を与える可能性がある。これによりSCで有用な治療法がASDにも有効である可能性があり、逆にASDにおいて有用とされる訓練技法がSCで有効な可能性があると言える。本研究は未だ体系化されていないASDの治療法を見出す画期的な糸口となることが期待される。精神医学世界で両疾患の共通性・異種性は学術的注目の的となっており、これらが解明されれば精神医学の発展に大きな影響を与え歴史的なパラダイムシフトを起こす可能性がある。またASDの感覚特性の問題は、行動面だけから評価することは難しく、自己評価や他者観察による評価だけでは見落とされる可能性があり、より定量的客観的な評価方法として神経生理学的アセスメント法開発への期待は大きい。本研究がASDの病態解明や生理学的評価法の開発、そして確立されていないASDの支援に多大な貢献ができると考える。本研究の目的は、ASDを対象に、i)多チャンネル脳波計を用いてASSRの測定を行うこと、ii)安静時機能MRIを測定して脳内の機能結合の評価を行い、ASDの科学的診断方法及び客観的治療反応性評価の確立を目指す事である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では、ASD患者及び健常対照者を被験者の対象としてデータを集めることを計画とした。ASD患者18名、健常対照者10名のデータは揃っており、概ね計画通りにリクルートは行われている。同意を得た被験者のうち、まだMRI及び脳波を受けていない被験者について引き続きデータを集める必要がある。取得されたMRIデータの下処理及び脳波のフィルター処理はある程度数が揃ったところで随時行われており、解析準備を整え、解析手法について考察の上進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、引き続き被験者登録を行いできるだけ多くの被験者を集める。ASD患者及び健常対照者に協力を依頼する。ある程度データが集まったところで解析を進め検証を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルスの影響で、学術集会開催に関して中止や延期となったため、旅費がかからず翌年度持ち越しとなったことは大きく関係する。 (使用計画)被験者の数を引き続き集める。解析ソフトウェアや物品購入及び学会参加を行う。
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