2020 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of normal cell fraction in the liver triggering radiatino inudced liver disease
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20K07994
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 実 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (00319724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 浩之 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30274434)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕獲照射 / ホウ素中性子捕捉療法 / 放射線誘発肝障害 / 類洞閉塞症候群 / α―オートラジオグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓全体に30Gy以上、放射線を照射すると放射線誘発肝障害という致命的な有害事象を引き起こすことがある。この放射線誘発肝障害の本態は、類洞閉塞症候群(sinusoidal obstructuion syndorome、以下SOS) と呼ばれる病態で、大量化学療法後にも同じ病態が引き起こされる。本研究は、放射線照射におけるSOS発症の機序を明らかにするため、ホウ素中性子捕獲照射(Boron neutron capture radiation, 以下BNCR)の手法をマウス肝臓への照射方法として用いた。 BNCRは、ホウ素と熱中性子が反応して生じる細胞1個以下の飛程のヘリウム原子核、反跳リチウム原子核の2つの重粒子線により細胞レベルでの照射が可能である。本研究では、肝実質細胞分画、非実質細胞分画、それぞれを選択的に認識して集積する糖鎖―ホウ素クラスター結合アルブミンを開発し、実験に使用した。 本年度は、目的とした正常細胞分画へ糖鎖-ホウ素クラスター結合アルブミンが選択的に集積するかを明らかにする実験を実施した。その解析には、αーオートラジオグラフィの手法を用いた。粒子線飛跡解析プラスチック上に、糖鎖―ホウ素クラスターアルブミン投与後に、マウスから摘出した肝臓の切片を貼り付け、研究炉からの熱中性子線を照射した。ホウ素と中性子が反応して生じる重粒子線による傷が、プラスチック上に刻まれ、それを可視化し、同時に作成する組織イメージと重ね合わせることにより、そのホウ素の分布を確認した。本年度は、肝実質細胞(Hepatocyte)を選択的に認識する糖鎖―ホウ素クラスター結合アルブミンを使用して実験し、その結果、肝細胞に均一に、そのアルブミンが分布していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究においては、研究用原子炉から取り出される熱中性子照射が必要である。しかし、2020年度の研究用原子炉がコロナ感染拡大のため、当初の利用運転が数か月延期され、実際の運転開始が10月末となり、利用運転時間は約1/2となった。 そのため、実験の進行にやや遅れをきたしている現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、非実質細胞を認識する糖鎖―ホウ素クラスター結合アルブミンを使用してその分布を解析し、肝実質細胞を認識する糖鎖―ホウ素クラスター結合アルブミンとあわせて薬理動態解析も実施する予定である。 これらの結果をもとに、投与から照射までの時間を最適化(肝臓のホウ素濃度集積が最も高くなるタイミング)して、マウス肝臓へ照射実験を実施する。照射後、急性期障害として血液検査での肝逸脱酵素等の検討、肝細胞の脂肪変性などの検討と、類洞閉塞症候群(SOS)を引き起こす活性型筋線維芽細胞の免疫染色、病理組織学的検討、線維化に関するタンパクの解析などを実施し、放射線照射におけるSOSの引き金となる責任細胞分画を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究においては、研究用原子炉から取り出される熱中性子線照射が必要であったが、コロナ感染拡大を受けて、研究炉の利用運転開始が大幅に遅延した。それを受けて、本研究の進行も若干の遅れをきたしたため、計画通りの経費を消費できなかった。この次年度使用額は、研究消耗品の物品費に合わせて使用する予定である。
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