2020 Fiscal Year Research-status Report
高い抗腫瘍効果と副作用軽減を同時に目指す新規放射線治療法
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20K08003
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
長澤 慎介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80835025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 淳子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (80415702)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放射線増感 / 放射線防護 / 放射線生物学 / 5-アミノレブリン酸 / 放射線力学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線治療では、腫瘍組織と同時に照射されてしまう正常組織への副作用が問題である。これまでに物理学的手法で精密な放射線照射が開発され著しい成果が得られて来ているが、化学的・生物学的手法による正常組織の防護方法の開発が遅れている。そこで、本研究では化学的・生物学的手法の開発を目指し、ミトコンドリア機能に着目した。5-アミノレブリン酸はがん細胞特異的にプロトポルフィリンIX蓄積を引き起こすことが知られており、プロトポルフィリンIXは放射線照射後活性酸素を生成し放射線増感剤として機能する。一方、5-アミノレブリン酸はミトコンドリア機能を活性化する能力があり、正常細胞ではHO-1(細胞保護に働く酵素)の発現も促すため、正常細胞では放射線防護能を上げることが期待される。 本研究においてまず初めに行うことは①5-アミノレブリン酸の正常細胞に対する防護効果の検証、②がん細胞に対する放射線増感作用の確認である。 ①について、正常細胞の防護効果は線維芽細胞のColony Formation Assayにより評価している。②について、腫瘍細胞の増感効果はin vivoと合わせるためメラノーマの細胞で検証している。なお、5-アミノレブリン酸は既に腫瘍制御実験で使用していることから毒性評価実験は必要としない。 今後評価予定のミトコンドリア機能の指標として、細胞の酸素消費能の評価、電子伝達系機能をタンパク質、遺伝子の発現などの項目を計画している。また、ミトコンドリア膜電位、ミトコンドリアDNAの損傷等の指標も用いる予定である。ミトコンドリアDNA損傷の評価はミトコンドリアを単離して、次世代シーケンス解析等により行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の蔓延に伴い、その対応のため研究業務のみならず通常業務さえ滞ることが多くなっている。研究施設の出入りや打ち合わせなどに必要な出張も控えざるを得ない状況がこの1年間続いているため、当初の予定に沿った十分な研究活動を進められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の前提となる、5-アミノレブリン酸の正常細胞に対する放射線防護能や腫瘍細胞に対する放射線増感能がある程度確認でき次第、その機序を探るために各種ミトコンドリア機能の評価に実験内容をシフトしていく方針とする。 しかし、研究業務を控えて通常業務に専念せざるを得ない状況はしばらく続くと考えられる。そのため、出来るだけ効率よく研究を進めることを目的として研究分担者の方で行える細胞実験については分担金を増やすなどして適宜進めていただく方針とする。研究内容の確認やすり合わせなど行うための出張についてはこれまで通り控える他ないが、web会議などを活用していくことでその代替とする。
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Causes of Carryover |
COVID-19への対応のため当初予定していた出張ができなかったことと研究が当初の予定に比べ進んでいないことから次年度使用額が発生しています。研究費の繰り越しに関しては研究期間の延長も今後考慮しています。令和2年度に進められなかった細胞実験の内、5-ALA濃度依存の放射線感受性もしくは抵抗性に関する評価を令和3年度に行い、令和3年度に行う予定だった5-ALA併用時における細胞の放射線感受性もしくは抵抗性に関する分子生物学的な探索をその翌年度に繰り越す予定としています。
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