2021 Fiscal Year Research-status Report
放射線照射された細胞の有・低酸素環境への適応機構の解明
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20K08065
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
劉 翠華 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 重粒子線治療研究部, 主任研究員 (00512427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 亮一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 重粒子線治療研究部, 主幹研究員 (90435701)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 低酸素培養 / miRNA array / 照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では生体内低酸素環境を模擬した実験系において、培養した細胞のmiRNAの発現により低酸素環境で培養した細胞の放射線抵抗性や染色体異常頻度の低減に関するメカニズムを分子レベルで明らかにすることである。具体的にはX線や高LET炭素線を用いて、マウス腎臓初代培養細胞及びヒト脳腫瘍細胞U87を照射し、照射された細胞は1%、3%、20%(常酸素)の酸素濃度環境で培養し、回収した細胞からmiRNAを含むトタールRNAを抽出し、抽出したRNAをラベリングやハイブリダイゼイション後にスキャンし、GeneChip miRNA Arrayを使用したmiRNAの検出、網羅的解析を行った。その結果、照射後の低酸素環境(1%、3%酸素)で培養した細胞のmiRNA Fold Changeは、常酸素環境で培養した細胞より2倍以上アップレギュレート、0.5倍以下ダウンレギュレートしたmiRNAが数多く検出された。マウス腎臓初代培養細胞は照射の有無に関わらず、常酸素環境より低酸素環境下で変動したmiRNAが数多く見られた。常酸素環境を比較対象とすると、1%酸素濃度環境下でのmiRNAの変動数は3%酸素濃度環境よりも大きく変動した。具体的には、非照射では2.6倍、X線や炭素線では1.1~1.3倍の変動幅があった。miRNAの変動数は酸素濃度に依存する事が示唆された。一方、ヒト脳腫瘍細胞U87では照射の有無にかかわらず、さらに酸素濃度にも依存していない傾向を示し、マウス腎臓初代培養細胞とは大きく異なる挙動を示した。 これらの結果から、マウス腎臓初代培養細胞はヒト脳腫瘍細胞U87より酸素濃度の影響を受けやすい事が示唆された。今後、特異的なmiRNAについて機能解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重粒子線がん治療装置(HIMAC)利用に関しては、既にHIMAC共同研究課題が採択されており、マシンタイム配分を受ける事が出来た。X線やHIMACを使用し、培養した細胞を異なるLET放射線で照射することができた。また前年度の実験で得られた結果を基に、さらに解析を進めることができた。脳腫瘍細胞U87をX線や炭素線照射後、異なる酸素濃度環境で培養し、細胞の回収及びmiRNAを含むトタールRNAを抽出でき、抽出したmiRNAサンプルをGeneChip miRNA Arrayを使用してmiRNA解析を行うことができた。また昨年度トラブルが多発していた低酸素インキュベータを改修し、殆どトラブルもなく、安定的に低酸素状態を作る事ができたため、本年度は実験の信頼性が担保できた。よって、本年度の研究計画は、ほぼ計画通りに遂行され多くの研究結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今まで得られた結果を基にして、低酸素に反応して大きな変動が見られたmiRNAについての解析に着手し、染色体修復や細胞増殖などの致死損傷に関連するmiRNAとの相関性を明らかにする。さらに特定したmiRNAのmimicあるいはinhibitorを用いて、細胞の生死にかかわるかどうかについて検討する。また、特異的miRNAの機能を解析し、複数の細胞間での相違についても調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大防止のため、出張の数が減少し、一部オンラインでの学会参加だったため、旅費に計上した費用が残った。また、注文した一部の消耗品や試薬の納品に遅延が生じたため、費用が戻ってきた。今年度は注文できなかった消耗品と試薬を注文とするとともに、対面での学会参加が多くなってきているので、学会出張を積極的に行う予定である。
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