2020 Fiscal Year Research-status Report
PET/MRIデュアル造影を目指した放射性Mn-52製造法の確立
Project/Area Number |
20K08130
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
森 哲也 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 助教 (40397287)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | PET/MRIトレーサー / Mn-52 / PET薬剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
MRI撮影に使われているMRI造影剤は、MRI診断能を向上させるために使用されており、この造影剤には常磁性金属が用いられる。造影剤の中には期待せぬ動態により蓄積が生じ重篤な副作用に発展するケースがあり、その挙動の把握が課題となっている。遷移元素のマンガンは常磁性でかつ低毒性のため、ガドリニウムに代わる元素として注目されている。マンガンの放射性同位体であるマンガン-52(Mn-52)は、マンガンの化学的特性を保持しつつ、ポジトロン断層撮影法(PET)でも検出可能な放射線を放出する核種であることから、Mn-52で標識されたPET薬剤を作成することでその動態をPETでも高感度かつ定量的に計測できると予想される。このPETとMRI双方のモダリティで撮像可能な造影剤の開発を実現するには、PET施設でのMn-52製造が不可欠となる。そのため国内外のPET施設に普及しつつある放射性銅-64(Cu-64)の製造法をベースとした手法でMn-52を精製できれば、Mn-52を用いた研究のルーチン化が可能となると考えられる。本研究では、Mn-62標識PET/MRI造影剤の開発を視野に入れ、院内小型サイクロトロンによるMn-52の製造法の確立を目指し、計画では、Mn-52精製および分析条件の検討、照射ターゲットの作成、照射実験、Mn-52標識体の作成・評価という工程で進めていく。Mn-52は、院内小型サイクロトロンで達成可能な52Cr (p、n) 52Mnの核反応で製造することを計画しているため、原料となる照射ターゲットは超高純度のクロム-52(Cr-52)を用いることにした。今年度は、Mn-52の分析条件の検討および照射ターゲットの作成について、本施設でルーチン化しているCu-64の製法に準じて試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、Mn-62標識PET/MRI造影剤の開発を視野に入れ、PET施設での院内サイクロトロンによるMn-52の製造法の確立を目指しており、今年度は、Mn-52の分析条件の検討および照射ターゲットの作成に着手した。 PET薬剤に適したMn-52を得るには、Mn-52を照射ターゲットのCr-52から分離する必要があり、Mn-52中に含まれるクロム元素の許容混入量を定める必要がある。クロムは、医薬品の元素不純物ガイドライン(厚労省)でリスクアセスメントのクラス3に分類され、注射剤では110 μg以下/10g製剤とされているため、この量を定量できる分析法が必要となる。そこで、Cu-64製造時に使用している高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用した遷移金属元素分析システムにてマンガンおよびクロムの定量化を試みた。その結果、マンガンについては定量的な結果が得られた一方で、クロムについては感度が鈍く適していないことが判明した。今後、別の条件または手法でクロムの定量化を検討することとした。照射ターゲットの作成では、Cu-64の製法にならい電着めっき法での実施を試みた。粉末の超高純度Cr-52を強酸で溶解させた溶液を電着めっき法で純金ターゲットディスクにめっきしたところ、期待値の90%の半分程度しかできていないことが判明し、現在プログラムや条件の見直しを含め調査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
クロム定量分析法の検討およびターゲット作成の条件検討を行う。次いで、非放射性マンガンとクロムを用いてマンガンの分離精製条件を検討し、Cu-64製造時に使用している自動精製装置での自動精製を試みる。
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Causes of Carryover |
元素の分離条件の確立が未達成のため、自動精製装置の改良に用いる予定であった予算が次年度に持ち越しとなった。
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