2020 Fiscal Year Annual Research Report
放射免疫療法と線維化阻害剤による小細胞肺がんの根治的治療法のメカニズム解明
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20K08148
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
藤原 健太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部, 研究員(任常) (80766907)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放射免疫療法 / 線維化阻害剤 / チロシンキナーゼ阻害剤 / 併用療法 / 小細胞肺がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小細胞肺がんに対する放射免疫療法(RIT)の治療効果を増強するための研究を行った。 RITは、がん細胞表面に高発現している抗原に結合する抗体を放射性同位元素(RI)で標識し、その薬剤を投与することでがん細胞に集積させ、標識したRIで直接がん細胞に放射線を照射する治療法である。RITは血流に乗せて全身に薬剤を運ぶため、抗がん剤のように診断で発見できない小さながんに対しても治療を行うことができ、外部放射線照射では治療ができない進行がんの患者にも効果が期待できる。また、がん特異的に治療効果を発揮するので、抗がん剤と比べて副作用が少ない。 過去の研究で、RIT を行った後の腫瘍に線維芽細胞が集簇することを確認した。線維芽細胞は各種成長因子を分泌し、治療後に生き残っている瀕死の腫瘍細胞の回復を助けている可能性が指摘されている。 筆者は集簇した線維芽細胞の働きを阻害することで、治療後の腫瘍細胞の回復をサポートさせず、腫瘍細胞を細胞死に誘導できるのではないかと考えた。そのため、小細胞肺がんモデルマウスに対し、Y-90標識抗ROBO1抗体による RITと、線維芽細胞の働きを阻害する線維化阻害剤を投与する併用治療実験を実施した。 RITと線維化阻害剤の併用により、小細胞肺がんモデルマウス6例中4例で腫瘍が消失し、全例が100日間の観察期間を生存した。一方、RIT単独群は全例で腫瘍の再増殖が見られ、6例中4例が観察期間終了までに人道的エンドポイントを超過した。生存期間の比較において、併用治療はRIT単独治療と比べてモデルマウスの生存期間を有意に遷延した。線維化阻害剤単独での治療効果は全く見られなかった。以上のことから、線維化阻害剤がRITの治療効果を増強することが示された。本結果は、小細胞肺がんのみならず、多くのがんに対する根治的治療法の開発において有用な知見となり得る。
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Research Products
(2 results)