2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K08158
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
津村 弥来 広島大学, 医系科学研究科(医), 研究員 (80646274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 賢 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (80457241)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 複合免疫不全症 / ユビキチン修飾 / 原発性免疫不全症 |
Outline of Annual Research Achievements |
脱ユビキチン化酵素であるCYLDは、NF-kBシグナル伝達を負に制御し、細胞増殖能, 免疫能等を調節すると考えられている。ヒトにおいては、CYLDのヘテロ生殖細胞系変異が皮膚腫瘍の原因となる抑制遺伝子としても知られている。一方で、CYLDの複合ヘテロ変異を持つ患者の報告は存在せず、ヒトにおけるCYLDの役割には未知の部分も多い。これまでの研究で申請者らは、複合免疫不全症患者においてCYLDの複合ヘテロ変異の同定に成功している。患者は複合免疫不全症に加えて、多発性丘疹状毛包上皮腫, 骨粗鬆症などを発症した。これら一連の症状は、Cyld欠損マウスの表現型と類似しており、患者は常染色体劣性CYLD異常症の世界第1症例と考えている。本研究では、ノックアウトマウスの表現型を参照しながら、患者でみとめる CYLD欠損の分子病態について解明することを目的とし研究を進めた。一過性強制発現系実験では、各アレルごとの発現、脱ユビキチン化能、NF-κBシグナル 伝達能について検討してその障害を明らかにした。患者由来の末梢血・骨髄細胞を用いた解析からは、免疫系細胞の量的・質的異常を明らかにするとともに、破骨細胞の過形成による骨粗鬆症発症との関連性についても明らかにすることができた。さらに患者由来の線維芽細胞を用いた解析では、TNF-αに対する脱ユビキチン化能、NF-κBシグナル伝達能の詳細を調べるとともにNF-κBシグナル伝達関連分子や下流分子の動態をmRNAレベル、タンパクレベルで検証を行い、いずれの実験においてもNF-κBシグナルの抑制障害を認めていた。一連の解析結果から、患者はCYLDの欠損によりNF-κBシグナルの抑制障害と脱ユビキチン化障害をきたすことで多臓器に渡る障害を呈することが明らかとなった。
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