2021 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラム障害の分子病態に関連するGPR85のシグナル伝達機構の解析
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20K08166
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
神保 恵理子 (藤田恵理子) 自治医科大学, 医学部, 講師 (20291651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桃井 隆 東京医科大学, 医学部, 客員教授 (40143507)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | GPCR / 自閉症スペクトラム障害 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症スペクトラム障害は、発話や非言語的コミュニケーションを含む社会的相互作用、反復的な行動等を伴う重度の発達障害である(American Psychiatric Association, 5th ed. 2013)。病因は複雑であり、遺伝的要因(<80%)と環境要因の組み合わせによって引き起こされる。原因として、複数のシナプス関連遺伝子が報告され、神経接着-足場蛋白質-受容体の蛋白質複合体に含まれる遺伝子の変異によるシナプス機能不全の関与が示唆されている。その中に、報告者らが見出したG蛋白共役受容体(GPCR)であるGPR85変異による、蛋白質複合体形成の障害も含まれると考えている。しかしながら、複数の原因遺伝子やこれらの遺伝子をコードする蛋白質と、分子病態との関係性は、依然として明らかでない。GPCRが形成するオリゴマーは、少なくとも2つの異なる受容体で構成される高分子複合体で、個々の成分とは異なる生化学的特性を持ち、様々な細胞シグナル伝達経路の活性化に関わることから、本研究では、GPR85に焦点を当て、自閉症スペクトラム障害との接点についての解明を進めている。 これまで、GPR85欠損マウスを用いたシグナル伝達系の解析をするために、細胞や組織に導入するGPR85-アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの構築と作製を行った。GPR85のリガンドが不明なことから、ベクターは細胞外側をチャネルロドプシン2と入れ替えたGPR85(正常)キメラ型を搭載し、光応答によるGPCRシグナル伝達経路の活性化によるリガンドの薬理効果を模擬的に検証した。マウス個体への導入の前に、遺伝子改変マウス由来の初代神経細胞培養系にAAVプラスミドベクターを導入した結果、青色の光を吸収したチャネルロドプシン2により神経活動を引き起こすことができた。現在、マウス個体へのAAVベクター導入に取り掛かっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
作製した哺乳細胞や組織に導入するGPR85-アデノ随伴ウイルス(AAV)プラスミドベクターをGPR85遺伝子改変マウスの初代培養細胞に導入できたところは評価できるが、個体への導入による解析にまで至らなかったことから、やや遅延しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
・GPR85欠損マウスを用いたGPR85シグナル伝達系の解析;キメラGPR85-AAVのベクターの光応答により変動する遺伝子と受容体の局在の解析;野生型とGPR85欠損ホモ型マウスの脳にキメラGPR85を導入・発現させ、光感受性による活性化で発現変動するRNA発現をマイクロアレイまたはマルチオミックス解析により比較する。また、キメラGPR85発現させたマウス脳領域でのGABA受容体およびSerotonin受容体の局在や発現量を免疫染色法により解析する。 ・シグナル伝達経路の変動解析;キメラGPR85を発現した神経細胞および脳領域について、シグナル伝達経路上のERKのリン酸化、IP3量等について解析を行う。また、リン酸化シグナル伝達の阻害剤を添加し、経路の特定を試みる。 ・GPR85とGPR37情報伝達系のクロストークの解析;自閉症スペクトラム障害の患者にGPR37とGPR85のそれぞれの遺伝子に (R558Q)変異と(M125T、V211L)変異を発見している。リガンド結合部位をGPR37と入れ替えたGPR85キメラAAVベクタープラスミドを作製し、野生型、GPR85欠損と変異マウスおよびマウス胎児由来の初代神経細胞に導入し、GPR37のリガンドとして知られているProsaponinのシグナル伝達系の解析を行う。
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Causes of Carryover |
世界情勢の影響により、マウス飼育や実験、消耗品の入荷に制約や遅延などが生じ、解析が思うようにできなかったことから。 なお、未だ入手が確定できない消耗品も存在するが、代替品などを十分に活用するよう努め、次年度に解析を進める予定である。
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