2022 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラム障害の分子病態に関連するGPR85のシグナル伝達機構の解析
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20K08166
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
神保 恵理子 (藤田恵理子) 自治医科大学, 医学部, 講師 (20291651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桃井 隆 東京医科大学, 医学部, 客員教授 (40143507)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | GPCR / 自閉症スペクトラム障害 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
Gタンパク質共役受容体85(GPR85)のアミノ酸配列は、種を超えて高度に保存され、GPR27、GPR173と共に、G タンパク質共役受容体 (GPCR)のサブファミリー(脳内発現超保存受容体ファミリー)に属する。GPCRは、中枢神経系のシグナル伝達に不可欠であり、精神障害および神経障害に対する治療標的とされている。最近では、自閉症スペクトラム障害、トゥレット症候群、知的障害、統合失調症等を含む神経発達精神障害における GPR85の関与が示唆されている。これまで、我々は、GPR85 が脳内の ニューロギリン(NLGN) に関連するシナプス後密度タンパク質 (PSD)-95 と関連すること、また自閉症スペクトラム障害患者で検出された変異を持つ GPR85 が、神経細胞の樹状突起形成を抑制することを報告している。 本研究では、GPR85シグナル伝達系の解析と変異の影響を調べるために、GPR85遺伝子改変マウスの脳に正常GPR85-細胞外側チャネルロドプシン2のキメラを導入した。光感受性による活性化によって発現変動するmRNA発現を、遺伝子導入群とコントロール群との二群間におけるマイクロアレイ比較解析を行い、差が大きかった7種類の変動遺伝子をリアルタイムPCRで確認した。キメラGPR85発現させたマウス脳でのGABA受容体およびSerotonin受容体のmRNA発現量とタンパク質認識抗体を用いた免疫染色法により解析した結果、遺伝子改変マウスにおける両方の受容体量は減少し、野生型に近づいた。タンパク質局在像も同様であった。また、GPR85とGPR37情報伝達系のクロストークの解析として、リガンド結合部位をGPR37と入れ替えたGPR85キメラAAVベクタープラスミドを作製し、初代培養神経細胞およびマウス脳への導入を開始し、Prosaponinシグナル伝達系を利用した解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
哺乳細胞や組織導入用に、リガンド結合部位をGPR37と入れ替えたGPR85キメラAAVベクタープラスミドを作製することができた点は評価できるものの、作製したAAVベクターのタイターが低く、解析を難しくしている。そのため、マウス個体への導入について再度、調整および遺伝子導入を行う必要があることから。
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Strategy for Future Research Activity |
・リガンド結合部位をGPR37と入れ替えたGPR85キメラAAVベクターを高タイターのベクターを再調整し、GPR85欠損マウスおよびマウス胎児由来の初代神経細胞に導入し、解析を行う。 ・GPR85欠損マウスを用いて、キメラGPR85-GPR37-AAVのベクターの光応答により変動する遺伝子と受容体の局在の解析として、野生型とGPR85欠損ホモ型マウスの脳にキメラGPR85を導入・発現させ、光感受性による活性化で発現変動をマルチオミックス解析する。 ・キメラGPR85を発現した神経細胞および脳領域について、シグナル伝達経路上のERKのリン酸化等についてシグナル伝達経路の変動について解析を行う。
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Causes of Carryover |
マウス個体への導入解析を進めるにあたり、再度のキメラGPR85ベクター調整および遺伝子導入を行う必要があることから。また、遺伝子改変マウスの繁殖遅延のため。
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