2022 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症モデルマウス由来アストロサイトによる興奮性シナプス伝達増強の分子機序解明
Project/Area Number |
20K08172
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
渡辺 拓也 福岡大学, 薬学部, 助教 (90509647)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アストロサイト / 自閉症スペクトラム障害 / バルプロ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder: ASD)では、興奮性-抑制性神経系バランスの興奮性へのシフトが病態の一つとして考えられている。ASDモデルマウス(胎生期バルプロ酸曝露マウス)から単離培養したアストロサイト(ASDアストロサイト)と共培養した正常神経細胞の興奮性シナプス伝達が増強していることを申請者は以前に明らかにした。そこで本研究では、その興奮性シナプス伝達増強機序の解明に取り組んだ。初年度の検討において、ASDアストロサイトと共培養した神経細胞では、シナプス開口放出に関わる2つの分子の発現量増加が認められた。このことからASDアストロサイトと共培養した神経細胞の興奮性シナプス伝達増強に、本2分子の発現量増加が寄与することが示唆された。次年度の検討では、形態学的な解析を行い、ASDアストロサイトは共培養した神経細胞の興奮性シナプス数ならびに樹状突起の長さを増加させていないことを認め、ASDアストロサイトは、共培養した神経細胞のシナプス数を増加するのではなく、1シナプスあたりのシナプス小胞数を増加させたことが考えられた。申請者は以前に電気生理学的検討において、ASDアストロサイト共培養系ではシナプス小胞数の増加を示唆する結果を得ており、今回の結果を一致していた。最終年度では、神経細胞のシナプス伝達増強を引き起こすアストロサイト側の候補分子の検討を行った。培養期間によって本候補分子の切断産物の細胞内存在量が変化し、それに応じて培養液中に遊離した候補分子の存在量も変化することが示された。このことから、ASDアストロサイトにおける本候補分子の切断異常による遊離物質量の変化が興奮性シナプス伝達増強に関与することが示唆された。ASDの発症機序として、アストロサイトにおける本候補分子の切断異常が考えられた。
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