2020 Fiscal Year Research-status Report
新たなアプローチによるX連鎖性疾患に伴うskewed X染色体不活性化機構の解明
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20K08176
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Research Institution | Institute for Developmental Research Aichi Developmental Disability Center |
Principal Investigator |
加藤 君子 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 遺伝子医療研究部, 研究員 (30598602)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | X連鎖性疾患 / X染色体不活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
X染色体不活性化(X chromosome inactivation, XCI)は女性のもつ2本のX染色体の片方を不活化させる現象であり、妊娠の最初期に生じる。通常、XCIはランダムに起こるため、母由来のX染色体が不活性化された細胞と、父由来のX染色体が不活性化された細胞は半分ずつになる。加えて、どちらか由来のX染色体が偏って不活性化される場合があり、これをskewed XCIという。とりわけ、skewed XCIはX連鎖性疾患の原因遺伝子に変異をもつ女性で多く報告されており、同一の変異であっても重症度や臨床経過が大きく異なる一因となっている。したがって、skewed XCIの理解は、保因者や潜在的な患者の同定、患者の予後や治療戦略を考える上で非常に重要である。しかし、倫理的な問題や技術的な問題があり、正常初期胚で生じるXCIの分子機構でさえ不明な点が数多く存在している。 マウスでは、分化誘導によりランダムXCIが起こるES細胞を初期胚のモデルとして、XCIが解析されてきた。ヒトでも、XCI開始前の初期胚を模倣したES細胞やiPS細胞が作製されている。しかし、一般的な手法で作製された細胞はXCIの初期化が不完全であり、不活性化X染色体の記憶が残存するため、XCIが解析できない。加えて、ヒトではマウスとは異なったXCI機構が指摘されている。そこで本研究課題ではXCIを解析できるヒトモデル系を作製し、X連鎖性疾患の病態発症機序を解明する。2020年度は、健常人由来iPS細胞を用いて、XCI解析が可能なモデル細胞の作製を試みた。また、XCIの状態を定量的に測定できる実験系を構築した。さらに、X連鎖性疾患患者由来のiPS細胞の樹立を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
健常人由来のiPS細胞を用いて、ヒト初期胚と同じくXCIがリセットされた細胞の構築を試みた。申請者独自の培養法を用い、ヒト胚盤胞期内部細胞塊のマーカー遺伝子を発現する細胞を作製することには成功した。しかし、同じ条件で培養した細胞集団には、マーカー遺伝子を発現しない細胞も多く混在しており、これらの細胞を分取する必要が生じたため。XCIを定量的に解析する方法については、おおむね実験系が立ち上がった。患者由来iPS細胞の樹立は現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト胚盤胞期内部細胞塊のマーカー遺伝子を発現する細胞に対して分化誘導を行い、XCIを生じさせ、初期胚と同じくランダムXCIが起こるのかどうかを確認する。ランダムXCIが起こればXCIがリセットされたことを示す。XCIがリセットされていた場合には、患者由来iPS細胞を同培養方法にて初期化し、患者でskewed XCIが生じる分子メカニズムを明らかにする。また、現在用いている培養方法では、細胞を分取する手間がかかること、および細胞を安定に培養することが難しいため、新たな培養方法の検討も同時に進める。
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Causes of Carryover |
実験が予定よりも遅れているため残金が生じた。iPS細胞の培養に必要な試薬の購入に使用する。
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