2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K08179
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
大河原 剛 三重大学, 医学系研究科, 講師 (20469034)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳幼児突然死症候群 / 原因遺伝子 / 発症機序の解明 / 妊娠中のウイルス感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
SIDSモデルラットの橋・延髄で発現量の増加が見られたケモカインX(仮名)を発現する細胞を同定するためにin situ hybridization (ISH)と免疫染色を組み合わせた2重染色を行った結果、ミクログリアがケモカインXを発現していることを明らかにした。ヒトでは44種類のケモカインがあり、その機能には冗長性が存在することから、ケモカインXと類似した機能が報告されているケモカイン12個とその受容体9個に関して、リアルタイムPCRで発現量に変化がないか調べたところ、SIDSモデルラットの橋・延髄で発現量の増加の見られたケモカインが8個、ケモカイン受容体が2個あることがわかった。SIDSモデルラットで見られた表現型が、ケモカインXの発現量の増加に起因するのか調べるためには、ケモカインXの過剰発現系とケモカインX遺伝子欠損動物の解析が必要である。ケモカインXの過剰発現系に関しては、これまでに新生仔ラット脳でのアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた外来遺伝子の過剰発現の報告がないため、AAVを新生仔ラットの側頭静脈に投与することで橋・延髄で外来遺伝子を過剰発現できないか検討する予定である。また遺伝子欠損ラットに関しては、先端モデル動物支援プラットフォーム・モデル動物作成支援に申請し、東京大学医科学研究所の真下研究室にケモカインX遺伝子欠損ラットを作製していただいた。今後は、この遺伝子欠損ラットを解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAマイクロアレイの結果、SIDSモデルラットの橋・延髄で2倍以上発現変化の見られた遺伝子が多く存在することがわかった。しかしながら、リアルタイムPCRにより多くの個体を用いて(コントロール群;n = 14, SIDSモデル;n = 13)解析を行った結果、マイクロアレイで発現変化の見られた遺伝子の多くは個体間での発現量のばらつきが大きく、統計的に有意な発現量の差が見られない遺伝子が多いことが明らかとなった。その為、文献検索を行いSIDSへの関与が疑われる遺伝子を網羅的にピックアップし、リアルタイムPCRにより発現量に差が見られないか解析を行った。その結果、候補遺伝子として、ケモカインXが浮上した。また、ケモカインXと類似の機能があることが報告されているケモカインに関してもリアルタイムPCRを行った結果、8個のケモカインがSIDSモデルラットの橋・延髄で発現量が増加していることを明らかにした。SIDS発症原因の候補が得られ、更に、先端モデル動物支援プラットフォーム・モデル動物作成支援により、その遺伝子の欠損ラットも作成していただいたことから、研究は順調に進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者が作製したSIDSモデルラットは、生後12日目の疑似細菌感染(LPSの投与)による死亡率の増加(コントロール群の死亡率:24.0 %, SIDSモデルラットの死亡率:76.9 %)が見られ、特定の発達時期(生後12~14日目)に高二酸化炭素ガス(73.3 % N2, 20.8 % O2, 5.9 % CO2)を吸気させた際の呼吸能に異常が見られるという表現型を示す。ケモカインXが、SIDSモデルラットで見られた疑似細菌感染による個体の死亡に関与するのか調べるために、生後12日目のケモカインX遺伝子欠損ラットにLPSを投与し、24時間後の死亡率に変化が見られないのか調べる。またケモカインXの過剰発現の実験も行う予定であるが、新生仔ラット脳でのアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた遺伝子過剰発現の報告がないため、この実験に関しては新たに実験系を構築する必要がある。新生仔マウスの側頭静脈にAAVを注入することで2週齢のマウス脳で外来遺伝子の発現が見られるという報告があることから、この系がラットに応用できないのか検討中である。
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Causes of Carryover |
学会がオンライン開催となったため、旅費の支払がなかったため。 繰り越した科研費は、ケモカインX遺伝子欠損ラットの維持と系統管理のために使用する。
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Research Products
(2 results)