2021 Fiscal Year Research-status Report
肺胞内免疫環境の再構築と微小血管障害の改善は早産児肺障害の新規治療法となり得るか
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20K08192
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
中西 秀彦 北里大学, 医学部, 教授 (70528207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北原 秀治 東京女子医科大学, 医学部, 特任准教授 (40510235)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 慢性肺疾患 / 免疫細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺胞および肺胞微小血管の発達が未熟な超早産児では、出生後の高濃度酸素投与や人工呼吸管理が要因で、肺胞微小血管障害を引き起こし、慢性肺疾患(chronic lung disease; CLD)へと進行する。本研究の目的は、CLDにおける肺胞微小血管障害とその再生過程における免疫細胞の動向やそれら肺胞構成細胞との相互作用について解析することである。主要研究項目は、① 肺胞障害および再生過程に関与する免疫関連遺伝子の同定と発現パターンの解析、② 肺胞構成細胞と免疫細胞との細胞間相互作用に関する免疫組織学的解析、③ 肺胞構成細胞の超微形態解析による免疫細胞活性に関連する抗原の発現部位の同定、であるが、本年度は、CLDに関連する免疫細胞の経時的動向を追うための手段として、フローサイトメトリーを用いてCLD、CLD回復期、回復期再生モデル肺におけるマクロファージの活性化の動向を比較することを目標として掲げた。新生仔マウスで実施する前に、まず事前に成獣テストマウスを用いて手技確立のための検証実験を行った。肺組織をコラゲナーゼ処理により単細胞化した調整液およびマウス気管支肺胞洗浄液(BAL)を作成し、抗F4/80抗体、M1型(表面抗原:CD80/86、CD11c)とM2型(表面抗原: CD206)の特異抗体を用いて多重染色し、フローサイトメトリーを用いて計測した。結果は、M0,M1は特異抗体により染め分けることが可能であったが、M2型はCD206 抗体の色素では、クリアに染色することが困難であったことから、別の特異抗体と蛍光色素の組み合わせおよび染色条件が必要と考えられた。現在、条件を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3~4年にかけても引き続きSARS-CoV-2による感染流行の影響を受け、研究活動制限、在宅勤務の推奨などのCOVID-19対策の影響や、各種研究会や学会の開催が中止となってしまったことを受け情報交換の場が減少したことも研究の進捗状況が遅れている要因の一つとなっている。それでも、本研究に使用するために調整した固定肺組織を用いて、CD31、αSMAの免疫組織染色結果より、各群の肺胞壁組織における血管内皮細胞、血管平滑筋細胞の占める割合や、肺組織HE染色標本を用いて肺構造の定量化を、オリンパス・カラーカメラ DP27を用いて実施し、現在解析中である。フローサイトメトリーは、抗体や蛍光組織の組み合わせなどの微調整が必要であることや、新生仔マウス肺から効率的に免疫細胞を収集するための手段として、新生仔マウス気管切開部よりPE10カテーテル挿入による気管洗浄液採取を行うか、肺組織自体を細胞化して収集するか、予備実験を継続している。次年度では、上記条件を確立させた後に、新生仔マウス肺組織を用いてフローサイトメトリーを実施して成果を得る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.フローサイトメトリーを用いて各モデル新生仔マウス肺におけるマクロファージの活性化の動向を比較する。CLDに関連する免疫細胞の経時的動向を追うために、各モデル新生仔マウス肺組織をコラゲナーゼ処理にて単細胞化した調整液を作成後、抗F4/80抗体、M1型(表面抗原:CD80/86、CD11c)とM2型(表面抗原:CD206)の特異抗体を用いて、M1/M2発現比をフローサイトメトリーで計測する。 2.多重免疫染色による肺胞構成細胞-免疫細胞間の相互作用の3次元的解析 血管内皮細胞(CD31、CD34、CD105等)や、血管平滑筋(αSMA)、肺胞上皮細胞(Pro-SPC)と、マクロファージ(F4/80、LYVE-1)、T細胞(CD3、CD4、CD8)などの細胞のマーカーを用いて多重蛍光免疫組織染色を施行し、染色結果の定量化を行う。 3.同定免疫関連遺伝子の障害・再生過程における経時的な発現量、発現パターンの解析 免疫関連遺伝子をピックアップし、特異的プライマーを用いたリアルタイムPCRにより、CLD、回復期、回復期再生モデルにおけるそれら関連遺伝子の発現量、発現パターンを解析する。特にCLDモデルでは、出生後、暴露後4、7、10、14日目、回復モデルでは、回復直後、4、7日目と、経時的な推移を解析する。
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Causes of Carryover |
次年度繰越金の発生に関しては、令和3~4年にかけての世界的なSARS-CoV-2による感染流行の影響を受け、感染防止策のために一時的な研究施設内での物流停止、研究活動制限、在宅勤務の推奨、各種研究会や学会の中止等により、研究の進捗が遅れたことが原因である。ただし必要でなかったわけではなく、次年度においては、COVID-19の動向に注視しつつ、研究を進めていく予定である。本研究では、肺胞壁を構成する細胞群を明らかにするために、それらの可視化のための抗体をはじめとした試薬類が必須である。具体的な消耗品費としては、実験用動物( ICRマウス他)の購入費および飼育費、試薬類には、培養用血清、免疫染色用の抗体、分子組織化学用の制限酵素、プローブ標識キット、標的遺伝子プライマー、PCR用試薬、電子顕微鏡用には、樹脂包埋キット、超薄用ダイヤモンドナイフ、画像解析用のコンピューター関連品、また、プラスティック器具類、論文別刷代などの諸費用が含まれる。その他、学外研究者との情報交換のための旅費、ならびに成果発表のための学会参加費などの旅費( 国内外を含む)、印刷費( カラー印刷)、論文投稿費用などが経費に含まれる。
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