2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the mechanism of genotype-phenotype correlation in cardiomyopathy using disease-specific isogenic iPS cells
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20K08193
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古道 一樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10338105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝田 晋介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問教授 (70407089)
湯浅 慎介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90398628)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心臓発生 / 胎児心筋細胞 / iPS細胞 / 左室心筋緻密化障害 / 低酸素 / サルコメア / 心筋症 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回我々は、サルコメア構造タンパクをコードするMYH7遺伝子に、表現型の異なる肥大型、拡張型および左室心筋緻密化障害(LVNC)の各心筋症を引き起こす変異を導入したiPS細胞株を作製し、表現型の差異が生じるメカニズムの解明を目指した。LVNC特異的な変異を導入したiPS細胞由来心筋細胞(LVNC iPS-CMs)は、MYH7遺伝子発現が著明に低下し、サルコメア構造が断裂する様子が電子顕微鏡解析で観察された。またLVNC iPS-CMsでは、コントロールiPS-CMsに比して、蛍光免疫染色で細胞増殖能の亢進が見られた。さらにCa2+イメージングで細胞内Caシグナルの異常パターンが、またパッチクランプで活動電位持続時間の短縮が認められ、心室筋様細胞の成熟障害が示唆された。網羅的遺伝子発現解析で、LVNC iPS-CMでは、コントロールiPS-CMsに比してHIF1A関連シグナルの活性化が見られ、低酸素環境における胎児心筋細胞の活発な増殖を模倣した細胞内遺伝子制御パターンが病態を反映する可能性が示唆された。 これまでの先行研究で、低酸素環境における心筋細胞増殖能および心室の肉柱形成亢進について動物実験における報告が少数認められていたが、ヒトにおいて実証されたことは無かった。本研究で得られた結果から推測される病態として、胎児心筋の低酸素環境下ではMYH7の発現が亢進するが、MYH7変異により心筋繊維構築が障害された場合、心筋細胞内でHIF1A活性化を介して低酸素環境を模倣することにより、MYH7発現を強制的に増加させようとする代償機構が働く可能性、さらに低酸素環境を模倣した遺伝子発現パターンが心筋細胞の成熟を障害し、心筋緻密層の形成が破綻する可能性が示された。本研究によりヒト心筋成熟の障害機序の一端を解明することで、心筋症の治療開発の一助となる知見を得た。
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