2020 Fiscal Year Research-status Report
SAMD9遺伝子変異が関与する造血異常と易感染性について
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20K08206
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川崎 ゆり 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (70507079)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | SAMD9 / MIRAGE症候群 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
SAMD9遺伝子にヘテロで変異を持つMIRAGE症候群の ①疾患特異的iPS細胞を2人の患者より計24クローン作製した。次に①のアイソジェニックコントロールとして、CRISPR-Cas9システムで変異遺伝子を修復した ②遺伝子修復iPS細胞を作製した。追加で、正常アレルをそのまま残し、変異アレルのみをノックアウトしたiPS細胞も作製した。一方で、③健常人由来iPS細胞を元に、正常型のSAMD9遺伝子を変異の遺伝子配列に変えた ④ノックインiPS細胞もCRISPR-Cas9システムで作製した。このノックインiPS細胞については、ヘテロで変異を持つものと、比較対照としてホモで変異を持つものを作製した。①疾患特異的iPS細胞、②遺伝子修復iPS細胞とノックアウトiPS細胞、③健常人由来iPS細胞、④ノックインiPS細胞(ヘテロおよびホモ)、これら作製したiPS細胞は全て単球に分化させ、この段階で株化したiPS-ML細胞(iPSC-derived Myeloid cell Line)としての樹立も完了している。更に、このiPS-ML細胞をマクロファージに分化誘導(iPS-MP細胞;iPS-ML-derived Macrophage)した後、このiPS-MP細胞を用いてサイトカインの産生を評価した。その結果、疾患特異的iPS-MP細胞で興味深い表現型が観察された。この表現型は、ノックインiPS-MP細胞で再現され確認することができた。それに対し、遺伝子修復iPS-MP細胞およびノックアウトiPS-MP細胞では、疾患特異的iPS-MP細胞で観察された表現型はキャンセルされ、健常人由来iPS-MP細胞と同様のサイトカイン産生を示した。このことは、MIRAGE症候群に特異的な病態を細胞レベルでとらえたものであると考えられ、病態解明に有用な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変iPS細胞の作製が、これまでの経験と新しい方法を取り入るなどの工夫が功を奏し、思いのほか順調に進んだ。完成したiPS細胞は、すでに血球系の細胞に分化することは確認済みで、iPS-ML細胞、iPS-MP細胞としてもサイトカイン産生を評価する細胞として利用可能な細胞が得られており、研究を順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
解析を進めるために必要な遺伝子改変iPS細胞を計画通り全て完成させることができたので、これらを駆使して研究を進めて行く。造血異常の解析のためには、これら遺伝子改変iPS細胞を造血コロニーアッセイに使用する。並行して、iPS細胞の長所を活かし、易感染性の解析のためには、iPS細胞を免疫担当細胞に分化誘導し、サイトカインの産生能を指標に研究を進めて行く予定である。サイトカインの産生については、MIRAGE症候群の疾患特異的iPS-MP細胞で特徴的な表現型が観察されるという結果をすでに得たので、この異常な表現型が出現するメカニズムについても追究していく考えである。
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