2020 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍優先的にP53応答を引き出す小児白血病の新たな分子標的治療戦略
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20K08209
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
河原 康一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (00400482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 康裕 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (30398002)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小児白血病 / がん分子標的治療薬 / P53 / 核小体ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、核小体ストレス応答を活性化し、P53たんぱく質の増加により、腫瘍細胞を殺傷するシード化合物を同定した。さらに構造展開を検討し、活性や特異性が高く、ADMEプロファイルが良好な新規化合物を見出した。本年度はこの化合物を活用し、小児白血病への治療効果と治療効果を予測するマーカーの同定を検討し、小児白血病の新たな治療基盤となる研究を目指した。そこで以下の結果を得た。 1)小児腫瘍の治療効果の検討 P53野生型小児白血病細胞株であるMOLT3,MOLT4, MV4-11,RS4(11), Sup-B15細胞を対象に、感受性を検討した。結果として、いずれの細胞株もIC50値が0.1μM前後となり、様々な小児白血病細胞は同定済み化合物に高感受性であった。次にこれらの細胞株のP53たんぱく質発現量を検討したところ、P53の増加がみられ、P53増加量と感受性の相関を確認した。以上から、同定済み化合物はP53経路を活性化させ小児白血病に抗腫瘍効果を発揮すると考えられた。 2)感受性を左右するマーカー因子の同定 同定済み化合物に高感受性である小児白血病細胞株と、低感受性である一部の固形腫瘍細胞や正常なヒト末梢血単核細胞のたんぱく質の発現を比較した。結果として、高感受性細胞に比べ、低感受性細胞はいずれも、タンパク質Xの発現が低いことを見出した。また高感受性腫瘍細胞に、タンパク質Xの発現を抑制すると、この化合物によるP53経路の活性化や感受性が低下した。次にタンパク質Xのモノクローナル抗体の作製を試み、内在性のたんぱく質Xを特異的に認識する抗体を産生するクローンを特定できた。このように、タンパク質Xは本薬剤の薬理作用に必須であり、感受性を予測するマーカーとなり、Xに特異的なモノクローナル抗体の作製により、治療感受性を予測する診断技術の開発や個別化医療の推進が期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果として、同定済み化合物の小児白血病の治療効果や、治療感受性を制御する新たな遺伝子を見出し、治療感受性を予測する測定法の確立ができつつあることから、おおむね順調に研究が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い以下を中心に検討を行う。 1)小児白血病を移植したマウスを用いたin vivo薬効薬理効果の検討 2)in vivoの副作用の有無の検討 3)化合物標的分子同定のためのプローブ化合物の作出 4)化合物に結合する分子の同定 5)治療感受性を予測する診断技術の確立
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Causes of Carryover |
腫瘍細胞を移植したマウスを用いたin vivoの薬効試験を計画していたが、in vivo評価系の構築のための条件検討に想定以上の時間を要したため、in vivoの薬効薬理試験の一部が行えなかったため。生じた次年度使用額は、in vivo薬効試験の消耗品購入費等の費用に充てる。
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Research Products
(6 results)