2020 Fiscal Year Research-status Report
小児における抗インフルエンザ薬低感受性ウイルス出現の監視と制御
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20K08210
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 晶論 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (60423795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 浩一 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (50322342)
細矢 光亮 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (80192318)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インフルエンザ / 抗インフルエンザ薬 / 薬剤低感受性インフルエンザウイルス / 小児 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019/2020年インフルエンザシーズンにおいてバロキサビル投与例20例、オセルタミビル投与16例の患者さんにご協力いただき、それぞれから鼻咽頭ぬぐい液を、投与前、投与後2回、合計3回、鼻咽頭ぬぐい液を採取した。このシーズンは合計で107検体採取できた。 2020年度内に、これらの検体を材料として、ウイルスRNAを抽出し、定量リアルタイムPCR法にてウイルスRNA量を測定した。さらに、感染性ウイルス力価も定量した。また、ウイルス分離を試み、分離されたウイルスを材料として薬剤感受性試験を実施した。その結果、バロキサビル投与20例中5例で薬剤低感受性ウイルス(以下変異ウイルス)が検出された。これら、5例と変異ウイルスが検出されなかった15例とを比較すると、患者の臨床背景や有熱期間には統計学的な有意差はなかったが、有症状期間や感染性ウイルス排泄期間は変異ウイルス検出例で延長した。これらの結果から、バロキサビル投与後に変異ウイルスが検出されると、臨床症状が軽快するまでに時間を要し、さらにウイルス排泄期間が延長されることが考えられる。しかし、臨床的な背景については、変異ウイルス検出例と非検出例との間で有意な差はみられなかったことから、主治医が実際にインフルエンザ患者に対し、バロキサビル投与を考慮する場合、その患者の中で変異ウイルスが出現するかどうかについて、予想することが困難であることを示唆している。 なお、オセルタミビル投与16例中3例で、オセルタミビル投与後に薬剤低感受性ウイルスが検出されている。この検出割合は従来の報告と比較しても高いものではないが、薬剤感受性サーベイランスは重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019/2020インフルエンザシーズンに収集した臨床検体を用いての解析は終了している。2020/2021インフルエンザシーズンに関しては、SARS-CoV-2流行の影響で、福島県内ではインフルエンザの流行はなかったため、臨床検体を採取・収集することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021/2022インフルエンザシーズンに向けて、検体採取液および臨床研究に必要な資料の準備を今後も継続していく。 組織培養にて、インフルエンザウイルスを細胞に感染させ、段階希釈したバロキサビルを含有する培養液で7日間培養する。このことにより、変異ウイルスが出現しやすいバロキサビル濃度の推定と培養日数を決定する。次に、ウイルスを細胞に感染させ、決定した変異ウイルスが出現しやすい濃度のバロキサビルを含む培養液で培養後、オセルタミビルを様々なタイミングで添加することで、変異ウイルスの出現を最も効率よく抑制できるオセルタミビルの添加タイミングを決定する。さらに、オセルタミビルを段階希釈して用いることで、オセルタミビルを添加しても、バロキサビルとオセルタミビルの双方に対して感受性が低下したウイルスが検出されないオセルタミビル濃度を決定する。
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Causes of Carryover |
2020/2021年度はインフルエンザの流行がみられず12月から3月にかけて組織培養やウイルスRNA抽出にかかる費用の支出がなかった。さらに、予定していた国内外の学会がオンライン参加となり、旅費がかからなかった。以上の理由により、2020年度で使用できなかった研究費を次年度に繰り越すことになった。
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