2023 Fiscal Year Annual Research Report
胎内環境下におけるサイトメガロウイルスの新たな垂直感染機構の解明
Project/Area Number |
20K08213
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
生田 和史 金沢大学, 保健学系, 教授 (60512184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石岡 賢 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (50305356)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | サイトメガロウイルス / 経胎盤感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus, CMV)は成人の多くに疾患を起こすことなく感染しているウイルスである。臓器移植に伴う免疫抑制剤の使用時には肺炎や腎機能不全、HIV感染における免疫低下時には網膜炎などの原因となる。 妊娠中の初感染では高率に胎内感染を起こすことが知られている。死産や流産を引き起こす。出生児においても全出産の約0.3%でCMV感染が認められ、そのうち約30%では黄疸、肝脾腫、脳内石灰化や聴覚障害などが認められる。出生時に何らの異常が無くとも、成長に伴って精神発達遅滞や聴覚障害を起こす場合もある。 胎内におけるCMV感染の詳細は不明である。胎盤環境がCMV感染に及ぼす影響を検討し、先天感染の詳細機構を明らかにすることが本研究の目的である。本研究では、胎盤で特異的に高発現するマイクロRNA cluster(C19MC)に着目した。経胎盤感染を起こさないウイルスでは、感染阻止に関与する可能性が報告されている。C19MCを導入した細胞にCMVを感染させ、C19MCの有無による感染効率などの詳細な差異を比較した。 昨年度までに、C19MC導入細胞にCMVを感染させ、C19MCによるウイルス感染亢進を確認した。CMV前初期遺伝子(Immediate Early, IE)発現量やウイルス量はC19MC BAC導入細胞で顕著に増大することを確認した。 本年度はこの事象に関わっている可能性がある宿主側遺伝子の候補を見出した。C19MC導入により発現変動が認められた遺伝子が複数あるなか、100倍以上の変動を認めたものはひとつのみであった。この遺伝子の発現を抑制すると、CMV IE発現が大きく増強することが確認された。胎盤環境におけるCMV特異的なウイルス増殖の可能性が考えられる。
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