2021 Fiscal Year Research-status Report
脊髄髄膜瘤に対する組み替えHGF蛋白を用いた新規胎児治療法の開発
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20K08215
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
落合 大吾 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (80348713)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胎児治療 / 脊髄髄膜瘤 / 二分脊椎症 / 肝細胞成長因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄髄膜瘤(Myelomeningocele; MMC)は、胎児期の神経管の閉鎖不全により、羊水中に露出した脊髄が損傷し非可逆性の神経障害を引き起こし、生涯にわたり 重篤な後遺症を来す難治性の神経疾患である。本研究では、葉酸代謝を阻害しMMCを胎児に誘発させるレチノイン酸を妊娠10日目のSprague-Dawleyラット母体に投与しモデルラットを作成し、肝細胞成長因子(Hepatocyte growth factor; HGF)による治療効果を検討した。 昨年度までの実験的検討では、安価なHGFが入手できなかったことなどにより、十分な投与量が確保できず、羊水腔内に投与したHGFが羊水によって希釈されてしまい、治療効果を見出すことができなかった。 今年度は、妊娠17日目にラット母獣を開腹し子宮を露出させ、高照度光下で子宮を透見して胎児の二分脊椎部を確認した。破水を防ぐため、32G針とハミルトンシリンジを用い、治療群にはPBSに懸濁した組み換えヒトHGF(recombinant human HGF; rhHGF)4μgを、コントロール群には同体積のPBSを、胎児の二分脊椎部に直接投与した。脊髄を直接穿刺することによる傷害を避けるため、脊髄神経組織そのものを避け、尾側から脊髄腹側に向けて刺入してrhHGFを投与した。手技の安定に時間を要したが、胎児から脊髄神経組織を回収し、RNAを抽出、RT-qPCR法で炎症性サイトカインの発現が有意について評価した。結果として、Tumor Necrosis Factor-α(TNFα)の発現が、治療群で有意に改善することを見出した。しかし、他の炎症性サイトカインやHGFの受容体などの発現で有意差はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
投与経路の選定に非常に時間を要したが、最終的に脊髄周辺部への直接投与法により、安定的な投与をすることができた。この投与法に起因すると考えられる子宮内胎児死亡(intrauterine fetal death; IUFD)も認めず、安全な投与方法であると考えられた。 昨年度に引き続き、脊髄損傷モデルなどで利用されているリザーバータンクを用いた持続投与法についても検討を行った。SDラットは一般的に14匹程度の胎児を同時に妊娠するが、コントロール群と治療群で2つのポンプを使う必要がある。また、1つのポンプから7箇所の羊水腔に分岐させ、なおかつ個別に適切な投与量を送達できるリザーバーポンプは比較的大型で、妊娠ラットの狭い腹腔内に収めることが困難であり実現に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
患部への直接投与により、一定の治療効果を見出すことができた。今後、さらにHGFの投与量や投与回数を調整し、最も治療効果が高いと思われる投与方法を確立する。また、炎症性サイトカインやHGF受容体の発現に関して、RT-qPCR法による比較だけでなく、病理組織学的検査による評価も行う予定である。 病理組織学的検査で神経細胞の回復といった治療効果を認めた場合、神経組織にマイクロアレイを用いた網羅解析を行い、受容体とそのパスウェイに関する検討を行う予定である。
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Research Products
(7 results)