2021 Fiscal Year Research-status Report
極低出生体重児に対する経母乳ヒトサイトメガロウイルス感染症対策
Project/Area Number |
20K08217
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
水野 克己 昭和大学, 医学部, 教授 (80241032)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幸田 力 昭和大学, 医学部, 准教授 (10365752)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 電子レンジ / サイトメガロウイルス / 温度変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
母親がサイトメガロウイルス(CMV)IgG陽性の場合、乳腺組織にてCMV再活性化が起こり、後天性CMV感染症を起こす。このため超早産児における経母乳CMV感染対策は重要な問題である。CMVは62.5℃30分のパスツール化により感染性はなくなるが、本機器はいまだ一般的ではないこと、また、生理活性物質の減少も大きい。 我々は人工乳にHCMVを添加した後に電子レンジ(MW)処理を行い、HFL-Ⅲ細胞表面に母乳をかけたところ感染細胞はなかった(Pediatr Int 2019;61:1227) 。人工乳と母乳では同じMW設定でも温度上昇に違いがあること、母体で再活性化したCMVでは細胞感染性に違いがあると考え、以下の実験を行った。 実験①:MW処理する際の母乳温度変化を実測する。MWでの母乳加温はCDCも温度ムラの点から禁止しているが、実際にMWの条件を変えて温度変化を計測したところ、以前報告されたような温度のばらつきはなく実行可能であると判断された(J Hum Lact doi: 10.1177/08903344211047452掲載済み)。 実験②:CMVIgG陽性の母親から得られた母乳100mlを1)無処理、2)200W60秒、3)500W60秒でMW処理を行い、その後にHFL-Ⅲ細胞にて細胞感染実験を行った。その結果、2)3)ともに無処理よりは感染性は低下したが、一定程度の細胞感染は認めた。そのため、実験2として50mlと100mlとで500W60秒で処理を行い、その後、細胞感染実験を行った。結果として50mlのほうが細胞感染はさらに減少した。母乳100mlを500W40秒の処理では分泌型IgA抗体、ラクトフェリン、TGF‐βなど生理活性物質に有意な減少は見られなかったが、さらに温度を上げると生理活性物質の減少も増えることが予測され、最適なMW設定を決めなければならない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はNICU入院中の極低出生体重児を対象としてRCTを行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の病院内感染対策対応としてNICUにおける面会制限があり、本研究の説明を母親に行うことが困難となった。 そのため、母乳をMW処理することの基礎研究を引き続き行っている。 結果は研究実績の概要に記述しているが、人工乳での基礎実験結果とは異なることがわかり、経母乳CMV感染対策として最適なMW設定を検討できたことは大きい。 現状でもNICUにおいては面会制限が続いていることもあり、実際に極低出生体重児を対象としたRCTが行えるタイミングを見極めている。基礎研究を引き続き行っていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
以前行った【HCMVを添加した人工乳】を500WでMW処理した場合と異なり、CMVIgG陽性母体から得られた母乳を同じ設定でMW処理しても、母体内で再活性化されたCMVは感染性は減弱するものの細胞感染性を保持していた。 現時点でCMVの細胞感染性が完全になくなるMW設定を用いることは、母乳成分への影響を考えるとデメリットのほうが大きいと考えられる。逆にさらに母乳成分への影響が少ないMW200Wという設定でも無処理と比べると有意に細胞感染性が低下することを考えると実際に臨床応用する際の設定を決めることが重要と考えられる。 今後の研究としては、MW処理による細菌数の変化やMW処理に対応可能な母乳保存用袋を開発することも重要であるため、引き続き基礎データの蓄積に努めたい。
|
Causes of Carryover |
購入予定の電子レンジ加温中の温度測定器を 貸与することができたため CMVのPCR検査ならびに細胞感染性実験は、共同研究者の教室で余剰のものを使わせてもらっているため。また、2022年度は試薬を購入予定である。(Primer Forward/Reverse 25,000円/1セット×16セット 400,000円 Probe LightCycler480用プローブマスター 5000反応分/20μl 37,1000円 × 3=1,173,000円)
|
Research Products
(2 results)