2021 Fiscal Year Research-status Report
ネフローゼ症候群新規原因遺伝子IL1RAPを軸とするネフローゼ症候群の病態解明
Project/Area Number |
20K08240
|
Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
熊谷 直憲 藤田医科大学, 医学部, 講師 (40400329)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 朋実 藤田医科大学, 医学部, 助教 (00866428)
池住 洋平 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (70361897)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ネフローゼ症候群 / IL1RAP / IL1R1 / 膜性腎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本研究計画において中心となる分子であるIL1RAPに関連した各種蛋白質などの発現を、免疫染色法によりステロイド依存性ネフローゼ症候群、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群、IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎などの腎疾患の腎病理組織検体を用いて検討した。その結果、少数例での検討ではあるがIL1-RAPおよびIL1R1が膜性腎症のみで糸球体に発現している可能性が示唆され、IL1-RAPとIL1R1の発現には疾患特異性があることが示唆された。既報では、IL1R1は膜性腎症以外の腎疾患においても発現が認められており疾患特異性は否定的とされている。IL1R1の発現に既報と本研究計画とで相違が生じた原因として、1)検出のために使用した抗体が違う、2)既報ではおもにin situ hybridization法による半定量的なmRNAの発現量で検出しているという検出方法の違い、などが考えられる。これまで各種腎疾患の確定診断には腎生検が必須であったが、膜性腎症においてはIL1R1の発現を指標とする、すなわち血中や尿中でIL1R1を測定することにより、非侵襲的に確定診断できる可能性が示唆された。 また、昨年度に引き続きIL1-RAPをノックアウトした不死化ヒト糸球体上皮細胞株の樹立を試みた。CRISPR-CAS9を用いてIL1-RAPをノックアウトするため、ノックアウト用のベクターの作成及びベクター導入の条件の検討などを行ったが、細胞株の樹立には至らなかった。また、使用する不死化ヒト糸球体上皮細胞が糸球体上皮細胞として十分な形質を保持していかどうかも検証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度の当初の予定では、IL1RAPをノックアウトした不死化ヒト糸球体上皮細胞株の樹立し各種実験を行う予定であったが、細胞株の樹立が当初の予定通りに進捗していない。また、腎病理組織検体のIL1RAP関連の免疫染色で注目に値する結果が得られ始めており、この分野での実験に時間などが割かれている影響もある。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果を踏まえ、特許申請が行えるように研究を推進する予定である。IL1R1は血中や尿中での測定方法が確立しているため、膜性腎症と他の腎疾患とで血中または尿中のIL1R1の濃度に明らかな差異が認められた場合には、IL1R1を測定することにより膜性腎症の確定診断を行える可能性がある。そこで今年度は、1)より多種類の腎疾患かつ多数の腎病理検体を用いて免疫染色法によりIL1R1の発現が膜性腎症に特異的なのかどうかを検証する。2)IL1R1の発現が膜性腎症に特異的であると判断した場合には、膜性腎症患者の血中や尿中でIL1R1が測定できるかどうか検証する。3)他の腎疾患患者においても血中および尿中でIL1R1を測定し、膜性腎症患者と他の腎疾患の血中や尿中のIL1R1濃度に明らかな差異が認められどうか検証する。これらの結果から、IL1R1の発現が膜性腎症に特異的であり、また血中や尿中のIL1R1濃度が膜性腎症患者と他の腎疾患患者とで明らかな差異が認められた場合には、特許申請を行うこととする。 また、昨年度に引き続き今年度もIL1-RAPノックアウトした不死化ヒト糸球体上皮細胞株を樹立を試み、IL1やIL-33、IL-36のそれぞれの受容体の発現の変化やそれぞれのインターロイキンによる反応性の変化を検討する予定である。また、不死化リンパ球においてもIL1-RAPのノックアウト株を樹立し、同様の実験を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
IL1RAPをノックアウトした不死化ヒト糸球体上皮細胞株を樹立し、各種実験を行う予定であった。しかし細胞株の樹立には至らなかったため、関連する研究費を使用しなかった。 また、COVID19の流行が昨年度に引き続きあり、本研究計画の遂行に影響を及ぼした。患者の受診抑制があり、必要とする新規の臨床検体が十分に入手できず関連する研究費の使用が予定よりも大幅に減少した。また、国内での移動制限や渡航制限などがあり、予定していた各種学会の現地参加ができずWEB参加に変更になるなど、関連する研究費の使用が予定よりも大幅に減少した。 以上の結果として、総額としては当初の研究計画で予定した研究費に比べ使用額が減少し、次年度使用額が生じた。
|