2021 Fiscal Year Research-status Report
クラッベ病に対するマイクロRNAの病態改善効果とその作用機序の解明
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20K08248
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Research Institution | Institute for Developmental Research Aichi Developmental Disability Center |
Principal Investigator |
稲村 直子 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 細胞病態研究部, 主任研究員 (20397623)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | twitcher / オリゴデンドロサイト / ミエリン / miRNA / ライソソーム病 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度クラッベ病モデルマウス(KDマウス)で観察される分化成熟の異常、サイコシンの蓄積や細胞死といった病態に対し、オリゴデンドロサイト(OL)の分化成熟に重要なマイクロRNAに改善効果があることを論文にまとめて発表した(Inamura et al., Brain Pathology, 2021)。本年度はこの結果を踏まえてマイクロRNAによるKDマウスOLの病態改善メカニズムをさらに詳しく解析するため、マイクロRNAにより発現変動する遺伝子を調べた。まずマイクロRNAで発現抑制を受けるとされる、OL前駆細胞(OPC)で発現する分化抑制因子について調べると、これらの分子の遺伝子発現は野生型OLに比べてtwitcherマウスOLで増加するが、マイクロRNA発現により抑えられていた。次に、OLの分化成熟に必要なコレステロール合成に関わる分子の遺伝子発現を調べると、野生型OLに比べてtwitcherマウスOLで減少するが、マイクロRNA発現により増加することが分かった。さらにサイコシン合成酵素とされる酵素の遺伝子発現はtwitcherマウスOLで増加するものの、マイクロRNA発現により減少することがわかった。これらの結果からtwitcherマウスで起こる分化成熟の異常とサイコシンの蓄積は、マイクロRNAが分化抑制因子やコレステロール合成酵素、サイコシン合成酵素の遺伝子発現を制御することにより抑えられると考えられる。そこでマイクロRNA発現によりtwitcherマウスOLで変動する遺伝子をさらに探査するため網羅的解析を行うと共にin vivoでのマイクロRNAの効果を調べるため脳内にアデノ随伴ウイルスを用いOL特異的にマイクロRNAを発現させる実験を行っており、今後は解析結果を詳しく分析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的のひとつとしていたKDに対するマイクロRNAの病態改善効果および作用機序について、KDマウスOLの分化成熟異常やサイコシンの蓄積のそれぞれに関連する遺伝子をマイクロRNAが制御することによって改善するという結果を得たことからマイクロRNAによる病態改善効果の作用機序を明らかにすることが出来たため。また前年度に試薬の供給が中断したため延期していた網羅的解析については、少量のサンプルで解析できる受託会社に変更しすでにサンプル調整しているものから順次解析を依頼することができたため、おおむね順調に進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的解析については解析結果を詳しく分析する。脳内でOL特異的にマイクロRNAを発現する実験ではすでに発現を確認しているが、さらに発現効率を上げるため検討を続けている。
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Causes of Carryover |
①網羅的解析について前年度サンプル調整に必要な試薬の供給が遅れた結果サンプル数を減らして網羅的解析を依頼したため②マイクロRNAの発現量を測定する試薬を購入予定であったが予告なしに生産終了し、次年度使用額が生じた。①については今後サンプルを追加して依頼する予定であり、②については試薬メーカーを変更し購入する予定であり、現在比較検討している。
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