2022 Fiscal Year Annual Research Report
骨石灰化におけるピロリン酸濃度とその調節機構の解明―網羅的代謝物遺伝子発現解析―
Project/Area Number |
20K08256
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
窪田 拓生 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40629135)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小児内分泌学 / 骨代謝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
リン酸は、骨形成に不可欠なミネラルである。しかし、リン酸が骨形成分化を促進する機構は十分には理解されていない。本研究では、リン酸が骨形成分化において誘導するシグナル伝達経路について検討した。 β-グリセロリン酸(GP)、1mM 無機リン酸(1 mM Pi)、もしくは3mM 無機リン酸(3 mM Pi)を含む培地を用いてヒト骨髄由来間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化誘導した。培養7日目において、3 mM Pi群ではGP群および1 mM Pi群に比べ、骨芽細胞分化と石灰化が促進された。培養7日目に行ったRNAシーケンスでは、3mM Pi群において骨形成に関与する遺伝子やWntシグナル伝達経路の構成因子の発現がGP群に比べ増加した。qPCRおよびウェスタンブロットによる解析では、3 mM Pi群では7日目にWNT5bやリン酸化c-Jun、ROR2 mRNA発現がGP群に比べて増加していることが示された。WNT11 mRNAの発現は2つの誘導群で維持培地と比べて増加した。WNT5b発現をsiRNAで阻害すると、WNT5b、WNT11、ROR2 mRNA発現、リン酸化c-Jun発現など非古典的Wntシグナルの構成因子の発現が低下した。また、3 mM Pi群では、WNT5bの発現抑制により、培養7日目の骨芽細胞分化と石灰化が部分的に低下した。さらに、FGFR1阻害薬を用いると、3 mM Pi群で上昇したWNT5b、Wnt11、ROR2 mRNA発現が部分的に抑制された。 本研究では、リン酸は間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化初期にWNT5b、WNT11、リン酸化c-Junの発現を上昇させ、非古典的Wntシグナル経路を活性化し、骨形成分化を促進することが明らかとなった。これらの知見は、骨形成分化におけるリン酸と非古典的Wntシグナル伝達経路の関連について新たな視点を提供する。
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Research Products
(1 results)