2020 Fiscal Year Research-status Report
濾紙血中のSMNタンパク測定による脊髄性筋萎縮症の新生児スクリーニング
Project/Area Number |
20K08259
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中村 公俊 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (30336234)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新生児スクリーニング / SMN蛋白 / qPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、脊髄の前角細胞の変性による筋萎縮と進行性筋力低下を呈する疾患であり、体幹、四肢の近位部優位の筋力低下、筋萎縮を示す (Finkel RS, Neurology 2014)。発症年齢、臨床経過に基づき、I型、II型、III型、IV型に分類され、I、II型の95%にSMN1遺伝子欠失を認める。重症例は人工呼吸管理を行わなければ1歳までに死に至る(Kolb SJ, Ann Neurol 2017)。最近、アンチセンスオリゴ核酸薬による治療が可能となり、発症の早期から治療を行うことで筋症状の改善が認められるようになった(Finkel RS, N Eng J Med 2017)。さらに、遺伝子治療薬の開発も進んでいる(Mendell JR, N Eng J Med 2017)。生後早期にこれらの治療をおこなうと、歩行が可能なまでに発達できることが分かってきた。このSMAでは、qPCR法を用いた新生児スクリーニング法が開発されているが、遺伝子診断を用いたスクリーニングであるため、倫理的な課題は多く、産科施設で説明をおこなってスクリーニングをおこなうには解決すべき点が多い。われわれは、新生児スクリーニング用の濾紙血を用いて、SMN蛋白を測定する方法を開発した(特許出願準備中)。本研究では、従来のqPCR法によって生じる倫理的な課題を解決し、濾紙血検体を用いたSMN蛋白測定による新生児期のSMAのスクリーニングをおこなう。この検査によって、本症の早期診断と新生児期のスクリーニングを可能にし、適切な治療時期の検討を行うことで、SMAの疾患概要を明らかにしつつある。SMN蛋白を測定することで、SMN1遺伝子の欠失のみならず、SMN2遺伝子のコピー数を推定できる可能性を明らかにした。さらに精度を上げた解析を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新生児スクリーニング用の濾紙血を用いて、SMN蛋白を測定する方法を開発した(特許出願準備中)。この方法では、濾紙血抽出とELISA法を用いることで、現在治療が可能なSMAをスクリーニングすることが可能である。このELISA法を応用したスクリーニング法は、これまで新生児スクリーニングに応用可能となったものはこれまで報告されていない。現在、新生児スクリーニングへの応用が検討されているqPCR法では、産科施設で遺伝子解析の説明と同意を得る必要があり、倫理的な課題を解決することが求められている。本研究では、濾紙血抽出-ELISA法を用いており、先天性甲状腺機能低下症のスクリーニングにおいてTSHを測定する方法と原理としては同じである。そのため、産科施設での説明と同意の取得は比較的容易であると考えられる。本研究で従来のqPCR法によって生じる倫理的な課題を解決し、濾紙血検体を用いたSMN蛋白量測定による新生児期のSMAのスクリーニングを容易に実現できる。この検査によって、本症の早期診断と新生児期のスクリーニングを可能にし、適切な治療時期の検討を行うことで、SMAの疾患概要を明らかにしつつある。SMN蛋白を測定することで、SMN1遺伝子の欠失のみならず、SMN2遺伝子のコピー数を推定できる可能性を明らかにした。さらに精度を上げた解析を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
qPCR法によるSMAスクリーニングと、ELISA法によるスクリーニングを試みている。qPCR法では、濾紙血の検体から直接qPCRをおこない、SMAI型患者と正常者とを容易に区別することができる(Feldkotter M et al. Am J Hum Genet 2002)。さらに、われわれが開発した濾紙血抽出-ELISA法を用いて、4件の患者検体と1,629件の新生児検体とを測定したところ、それらを容易に区別することができた。SMN1蛋白の測定値は、新生児検体の平均が34.6pg/disk (min-max 8.76-170.5 pg/disk)、4件の患者検体の測定値は、患者A:3.14、患者B:5.72、患者C:2.71、患者D:3.31 (pg/disk)であり、新生児検体の最低値である8.76 pg/diskと容易に区別することができた。再検査、精密検査を迅速に進めることで、新生児スクリーニングの実施が可能な値であると考えている。この結果を実際の新生児スクリーニングへの応用を試みる。測定結果は新生児マススクリーニングの実施施設を通じて、産科施設から保護者へと報告され、精密検査の対象者は熊本大学病院小児科外来を受診していただき、診察および遺伝子解析をおこなって、確定診断をおこなう。そしてフロッピーインファントとして既に発症が考えられるSMAI型乳児型では早期治療の適応と治療開始時期を決定する。精密検査や重症例に対する治療は、通常の保険診療によりおこなわれる。さらに、SMN蛋白を測定することで、SMN1遺伝子の欠失のみならず、SMN2遺伝子のコピー数を推定できる可能性が明らかになっており、精度を上げた解析を試みる。SMAの早期診断と新生児期のスクリーニングを可能にし、効果的なスクリーニングを実施し、患者発見から診断、治療までを迅速かつ効率的に行う医療体制を構築する。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、予定していた学会旅費が不要となり、その一部を物品費として研究の遂行に用いたが、差引額が生じた。次年度の旅費として使用予定である。
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Research Products
(8 results)