2021 Fiscal Year Research-status Report
Defects in histone modification cause phenotypic diversity of congenital malformations
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20K08270
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Research Institution | Kanagawa Children's Medical Center (Clinical Research Institute) |
Principal Investigator |
黒澤 健司 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 部門長 (20277031)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エピゲノム / ヒストン / Acetyltransferase / SET / CREBBP / マイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
エピゲノムは生物の発生と細胞分化を支える仕組みの一つで、DNAのメチル化、ヒストンの修飾、クロマチンリモデリングといった3つのプロセスからなる。本研究では、このエピゲノムの破綻と疾患発症との関連解明を主題としている。特に先天的なエピゲノムの変化が希少疾患の発症に深くかかわることを手掛かりに、分子生物学的な解析を進めてきた。方法としては、詳細な臨床所見の検討とゲノム解析、さらにトランスクリプトーム解析を合わせた網羅的な手法を用いている。今年度は2つの成果を得ることができた。第1はhistone acetyltransferase阻害因子(INHAT)であるSET nuclear proto-oncogeneをコードするSET遺伝子を含む9q34.11領域の微細欠失症例を知的障害症例のマイクロアレイスクリーニングによって検出し、SETのハプロ不全による特徴的な顔貌(斜頭蓋、広い額、発達した下顎、大きな口など)と知的障害の詳細を明らかにした(Shono et al., 2022)ことである。この例では合わせて隣接するSPTAN1遺伝子のハプロ不全が髄鞘化遅延や脳症発症などの表現型に影響を与える可能性が少ないことも明らかにした。第2は、histone acetyltransferase(HAT)活性をもつCREB binding protein(CBP)のハプロ不全を原因とするRubinstein-Taybi症候群19例の解析により、その発症原因となるゲノムの構造異常と臨床所見の多様性を明らかにすることができた(Enomoto et al., 2022)ことである。今後、複雑で多様な表現型とヒストン修飾の変化の関連性をさらに検討し、治療への手掛かりを模索する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒストン修飾の変化を原因とする新しい疾患の表現型を明らかにし、さらにこれまで報告のないゲノムの複雑な再構成によるヒストン修飾異常症をまとめ、新しい疾患発症メカニズムの解明につながる知見が複数得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
表現型の多様性を特徴とする先天異常症例に潜在する先天性のヒストン修飾異常をゲノムないしはトランスクリプトームレベルでスクリーニングし、発症メカニズムの全貌把握に努める予定である。特にこれまで、ハプロ不全を発症原因とする疾患の病態を明らかにしてきたが、検出した変異から必ずしもハプロ不全が原因とは限定できず、ときに優性阻害効果などによる発症機構も疑われる疾患も散見する。その場合の表現型は明らかにこれまで報告されてきた表現型と異なる。タンパクレベルの機能解析も視野に入れ解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
一部の解析では、既存解析資材と既存解析試料で当該年度解析が進めることができたため、次年度使用額が生じたが、対象計画におけるマイクロアレイ解析やエクソーム解析などのゲノム、RNA解析には変更ないので、次年度以降に解析を行うこととなった。
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Research Products
(10 results)