2021 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア光活性による胆管癌発生経路の可視化と分子学的解析
Project/Area Number |
20K08277
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高原 楠昊 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10750622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立石 敬介 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20396948)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胆管癌 / エピジェネテイクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では胆管癌患者由来の腫瘍部と隣接非腫瘍部のそれぞれの組織から樹立したオルガノイドを用いて、胆管癌細胞が5-ALA依存性の光活性を呈することを見出している。この活性は非腫瘍部胆管細胞では認められず癌特異的であった。このオルガノイドにおける光活性を指標として、遺伝子変異蓄積による胆管細胞の癌化過程を可視化・解析するツールとして活用する。 胆管癌の分子学的、生物学的特性には未だ不明な点が多い。他の胆道癌と同様に未だ十分な治療の選択肢がなく、治療標的となる分子についても決定的なドライバー変異が明らかでない。診断においても胆管内の正確な癌進展範囲の決定には画像診断上の困難が多い。肝外胆管癌のドライバー遺伝子候補として、KRAS,SMAD4, ARID1A, GNAS, ELF3, ARID1Bなどが報告されているが、各変異の発癌への寄与について十分検討されているとは言えない。さらには胆管癌の発育形態における結節型あるいは平坦型、また粘膜内あるいは粘膜下などの進展様式の違いに関連する遺伝子変異プロファイルも殆ど解明されてはいない。上記を解明するための実験系の問題点として、これまでヒト胆管癌の研究ツールとしては数少ない細胞株に限られ、症例ごとの進展様式の違いを反映する細胞モデルや、正常・前がん状態の胆管細胞の培養系も存在しなかった。 今回見出した胆管癌での5-ALA依存性の光活性につながる原因として細胞内ポルフィリン代謝の構成因子の発現異常、さらには関連するエピジェネテイクス制御異常を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでヒト胆管癌の研究ツールとしては数少ない細胞株に限られ、症例ごとの進展様式の違いを反映する細胞モデルや、正常・前がん状態の胆管細胞の培養系も存在しなかった。 本研究では倫理委員会の承認のもと、胆管癌患者由来の腫瘍部と隣接非腫瘍部のそれぞれの組織からオルガノイド培養系を樹立することに成功した。このオルガノイドモデルを遺伝子変異の蓄積と胆管癌発生過程との相関を可視化・解析するツールとして活用している。その結果、5-ALA処理後に375-445nmの青色可視光照射を行ったところ、胆管癌オルガノイドでのみ、励起された赤色発光を示すことを見出した。すでにその結果は論文として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究成果は胆管癌診断の臨床応用にも可能性を有する。 胆管の腫瘍化マーカーとして用いるALA依存的光活性は、胆管癌細胞においてミトコンドリア内でのPpⅨの分解能が低下し細胞内に蓄積することを示唆していた。マーカーとしての分子学的裏付けを得るために、原因となる責任因子を明らかにし、その発現を臨床材料を用いて検討し実臨床への発展の基礎データを取得する。
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