2020 Fiscal Year Research-status Report
鉄除去により強制的に変化させた代謝を標的とした新規抗癌併用療法の開発
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20K08289
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
藤澤 浩一 山口大学, 医学部, 講師(寄附講座等) (00448284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高見 太郎 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (60511251)
松本 俊彦 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70634723)
山本 直樹 山口大学, 教育・学生支援機構, 教授 (90448283)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 癌 / 鉄キレート / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄は生体に必要な微量元素であり、鉄キレート剤は癌に対する新たな治療ストラテジーとして注目されているが、有効性については議論があり、より効率の良い治療法が求められている。細胞内には鉄が必要な様々なタンパクがあり鉄キレートによってこれらを阻害することで細胞内代謝が大きく変化することから、鉄キレート剤投与により強制的にモディファイされた代謝変化をターゲットとした併用抗癌療法について検討した。DFO投与によっておこる代謝変化を解析するとともにDFO耐性株における耐性メカニズムを解析することで新たにDFOとの併用効果のある薬剤の同定を行った。HeLa細胞のDFO耐性株を作製し代謝産物および遺伝子発現の変化を評価したところ、耐性には解糖系優位の代謝への変化が重要であることが示唆された。そこで解糖系優位となり最終的に作られる乳酸の排出を阻害する乳酸排泄抑制剤の併用効果を評価したところ、DFO単独及びCHC単独の場合と比べCHCとDFOの併用で抗癌効果の増加が認められ、さらにCombination indexは1.0未満の値を示したことから,DFOとCHCの併用効果は相乗的と考えられた。しかし肝癌細胞株(Huh7)では併用効果が認められなかったため解析を行ったところ、乳酸産生能の低いことが原因と考えられた。今後Huh7でのDFO併用療法の開発を行っていく予定である。本研究を続けることでDFOを投与し強制的に変化させた細胞代謝をターゲットとした薬剤併用療法が癌治療において有用なものになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DFOの効果を癌細胞で確認することができ現在論文投稿準備を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
肝がん細胞株のDFO耐性株の代謝評価 肝がん細胞株を用いてDFO耐性株を作製する。代謝評価で得られた候補薬剤とDFOとの併用効果の評価を行う。細胞の増殖性は全自動ハイスループット生細胞解析システムであるIncucyteを用いてIC50を算出する。またウエスタンブロッティングや遺伝子発現を評価すると共にミトコンドリア活性を細胞外フラックスアナライザーで評価する。In vivoではヌードマウスの背中にXenograftを行い、候補薬剤とDFOの併用投与を行う。腫瘍サイズを約一ヶ月測定する。腫瘍は免疫組織染色により増殖効果をKi67やアポトーシスについて評価する。 DFOに対して生存率向上に関わるNupr1を抑制することによる併用療法の評価を行う。 DFO投与によりNupr1の発現が上昇し生存に役立っていることがこれまでの我々の研究で解明しており、さらにNupr1は膵臓の発現が高いことが知られている。DFOの投与によりNupr1の発現は急増し、細胞保護性オートファジーに関わると考えられている。Nupr1の阻害剤であるTFPとDFOの併用効果を肝がん細胞であるHuh7と膵癌細胞株であるPanc1で評価する。
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Causes of Carryover |
ノックアウトマウスの作製がコロナ禍のため遅れ解析にかかる費用の使用が延期となったため。
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