2020 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子改変iPS細胞を用いたHBVゲノムの組み込みによる発癌メカニズムの解明
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20K08303
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
新田 沙由梨 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任助教 (20527056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30372444)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HBV integration / 肝細胞癌 / B型肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、独自に確立した手法で純化したヒトiPS細胞由来肝幹・前駆細胞を用いて、HBVのTERT領域へのintegrationによる肝発癌に関わる分子機構を明らかにすることを目的として研究を遂行し以下の実績を得た。
1.HBV integrationモデルiPS細胞の樹立: ヒトiPS細胞のホストゲノムにcrispr/cas9システムによるゲノム編集技術を用いてHBVゲノムの一部を挿入したHBV integrationモデルを作成した。本研究では、ホストゲノムのTERT領域へのintegrationによる肝癌に注目しており、既報および申請者らの過去の検討から多くの症例に見られることが明らかになったintegration break pointを模倣し、TERT promoter領域へHBxの3’末端が数塩基欠失した配列を挿入するモデルをデザインした。樹立したこれらのintegrationモデル細胞は、iPSマーカーであるNANOGやOCT3/4A遺伝子の発現が野生型のiPS細胞と同等に見られることを確認した。また、HBx領域のmRNAレベルでの発現が認められることを確認した。
2.HBV integrationモデルiPS細胞の肝細胞への分化誘導:1で樹立したHBV integrationモデルiPS細胞の肝細胞への分化誘導を行った。分化誘導を行った細胞は、いずれもALBやAFPなどの肝細胞マーカーを発現していることを確認した。これらの細胞においてもHBx領域のmRNAは発現しており、分化誘導を行う前のiPSの段階にくらべ発現レベルは上昇していることが明らかとなった。さらに、これらの細胞の転写産物の発現を網羅的に解析するために、RNA sequence解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HBV integrationモデルiPS細胞の樹立については、想定したデザインの通りのモデルを樹立することに成功した。シークエンス上想定通りの配列にゲノム編集できただけでなく、HBx領域のmRNAの発現も確認できたことから、このモデルがHBV integrationモデルとして妥当であるものと考えられた。これらの細胞ではiPSマーカーの発現が遺伝子編集していないiPS細胞と同等に認められiPS性が失われていないと考えられ、また肝細胞への分化誘導を行うと、肝細胞マーカーであるAFPやALBなどの発現を認め、肝細胞系譜細胞へ分化誘導可能であることが明らかとなった。 さらにHBV配列をTERT promoter領域に挿入したことにより、どのような変化が生じるか網羅的に解析を行うためすでにRNA sequence解析を行っている。
以上のように、研究計画はおおむね順調に進展しているものと思われる
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Strategy for Future Research Activity |
樹立したHBV integration iPSモデル細胞由来肝細胞について、TERTが制御する癌関連分子などの各種遺伝子発現、あるいはタンパク発現について解析を行う。また、RNA sequence解析結果をもとに、転写産物の発現比較解析あるいはパスウェイ解析などを行い、遺伝子編集により変化を生じた遺伝子や関連するパスウェイに注目し解析を進める。また、RNA sequence解析の結果から、TERT-HBV融合転写産物の存在やその配列について明らかにする。融合転写産物が検出されていれば、その転写産物を合成し、発癌あるいは悪性形質獲得に関わる何らかの機能を有するのかin vitroで検証する。 HBV integrationモデルについては、現在のところHBx遺伝子のほぼ全長を挿入したモデルのみ樹立しているが、既報や申請者らの過去の肝癌検体の検討よりHBxの上流に存在するHBV のenhancerやpromoter配列も含まれていることが多いことが明らかとなっていることから、これを模倣し、HBxのenhancer/promoterを含む配列を遺伝子編集にてTERT promoter領域に挿入したモデルについても樹立を試みる。樹立が可能であれば、この細胞についても同様の解析を進める。 さらに、申請者の所属する施設で保有する肝癌手術検体と同一症例の非癌部のRNA sequence解析を行い、TERT promoter領域へHBV integrationが認められる症例における特徴を明らかにする。得られた結果をもとに、integrationモデルiPS細胞や肝がん細胞株などを用いて検証を行う。
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Causes of Carryover |
理由:試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため 使用計画:検討する数、種類を拡大して解析を行うため、試薬増量して購入する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Mac-2 binding protein glycosylation isomer as a novel predictive biomarker for patient survival after hepatitis C virus eradication by DAAs.2020
Author(s)
Mina Nakagawa, Nobutoshi Nawa, Eiko Takeichi, Taro Shimizu, Jun Tsuchiya, Ayako Sato, Masato Miyoshi, Fukiko Kawai-Kitahata, Miyako Murakawa, Sayuri Nitta, Yasuhiro Itsui, Seishin Azuma, Sei Kakinuma, Takeo Fujiwara, Mamoru Watanabe, Yujiro Tanaka, Yasuhiro Asahina, Ochanomizu Liver Conference Study Group.
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Journal Title
J. Gastroenterol
Volume: 55
Pages: 990-999
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Time course alterations of virus sequences and immunoglobulin titers in a chronic hepatitis E patient2020
Author(s)
itta S, Takahashi K, Kawai-Kitahata F, Tsuchiya J, Sato A, Miyoshi M, Murakawa M, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Kakinuma S, Watanabe M, Asahina Y.
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Journal Title
Hepatol Res.
Volume: 50
Pages: 524-531
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Comprehensive analysis of cancer-related genes and aav/hepatitis b virus integration into genome on development of hepatocellular carcinoma in patients with prior hepatitis b virus infection2020
Author(s)
Fukiko Kawai-Kitahata, Yasuhiro Asahina , Sei Kakinuma, Miyako Murakawa, Sayuri Nitta, Masato Miyoshi, Ayako Sato, Jun Tsuchiya, Taro Shimizu, Eiko Takeichi, Mina Nakagawa, Yasuhiro Itsui, Seishin Azuma, Shinji Tanaka , Minoru Tanabe, Shinya Maekawa, Nobuyuki Enomoto and Mamoru Watanabe
Organizer
EASL The Digital International Liver Congress 2020
Int'l Joint Research
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