2022 Fiscal Year Research-status Report
HBV特異的CD8+T細胞におけるI型IFNシグナル抑制の意義とメカニズムの解析
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20K08313
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
五十川 正記 国立感染症研究所, 治療薬・ワクチン開発研究センター, 室長 (50723201)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | B型肝炎ウイルス / T細胞 / I型IFN |
Outline of Annual Research Achievements |
B型肝炎ウイルス(HBV)持続感染患者の多くはB型慢性肝炎を発症し、肝硬変や肝細胞癌へと進行する危険にさらされている。HBV の排除には感染細胞を選択的に破壊することの出来るHBV 特異的 CD8+T 細胞応答が必要である。しかしながら、HBV持続感染患者ではその機能性が顕著に低下しており、いわゆる「免疫寛容」の状態にある。申請者らは、免疫寛容状態にあるHBV特異的T細胞内で特 徴的に変動する遺伝子を網羅的に解析した。その結果、これまでに報告されているチェックポイント分子の上昇に加え、IFN誘導遺伝子群(ISGs: interferon stimulated genes)の減少が顕著に認められた。本研究の目的は、肝臓内で誘導されるHBV特異的免疫寛容におけるIFN-Iシグナル抑制の意義とメカニズムを明ら かにし、IFN-Iシグナル抑制を解除することにより、HBV特異的免疫寛容を克服できるかを検討することである。これまでに、肝臓内で強くI型IFN応答を誘導することで、HBV特異的CD8+T細胞応答の免疫寛容を克服できることを明らかにした。これらの成果は、2021年2月にJCI Insight に報告した。R4年度は免疫寛容状態にある際のHBV特異的CD8+T 細胞を共刺激分子であるOX40を介して刺激した際のIFN-Iシグナルを解析した。OX40刺激をうけたHBV特異的CD8+T 細胞は機能性を獲得したが、その機能性の獲得はIFN-Iシグナルの増加と相関していた。以上の結果はHBV特異的免疫寛容克服におけるIFN-Iシグナルの重要性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
種々のトランスジェニックマウスのコロニー再構築に時間がかかっている。また、新型コロナウイルス対策にも携わっているため、自由に使用できる研究時間がやや制限されている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、肝臓内でのI型IFNの誘導が免疫寛容の克服に重要であることがわかった。来年度はOX40刺激によって誘導されるT細胞の機能分化にI型IFNがどの程度関与しているか検討する。HBV特異的CD8+T細胞受容体(TCR)を発現するTCRトラ ンスジェニック(TCR-Tg)マウスをI型IFN受容欠損 (IFN-abRKO)マウスを交配させ、IFN-abRKO-TCR-Tgマウスを作成する。野生型、およびFN-abRKO-TCR-Tgマウス から採取したT細胞性をHBV-Tgマウスに養子移入し、同時にOX40シグナルを刺激する。その結果IFN-abRKO T細胞では野生型T細胞に比べて、機能性の回復が劣 かを検討する。
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Causes of Carryover |
マウスコロニーの移管に時間を要している。さらに新型コロナウイルス対策にもエフォートをさく必要があり、十分なHBV研究 ができなかった。したがって、R4年度は高額な試薬の購入がなく、コロナウイルスパンデミックの影響もあり、当該研究費による旅費支出も不要であった (使用計画)研究3年度目となるR4年度は消耗品費が増える見込みである。また、比較的多くのRNAシークエンス解析を行う予定であり、高額な支出が予想される。 繰越研究費を加えることでこれらの支出をまかなう計画である。
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Research Products
(3 results)