2020 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of enhanced hepatotoxicity through fatty acid metabolic imbalance in the progression of fatty liver disease
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20K08315
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
今 一義 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30398672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池嶋 健一 順天堂大学, 医学部, 教授 (20317382)
李 賢哲 順天堂大学, 医学部, 助教 (30758321)
千葉 麻子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40532726)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎 / 肝がん / 脂質合成 / 脂肪酸不飽和化酵素 / 酸化ストレス / 抗酸化物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、本研究の目的である脂肪毒性を発揮する脂肪酸代謝と分子構造の変化を明らかにするために、脂肪酸不飽和化酵素2(FADS2)ノックアウトマウスおよび非肥満・非糖尿病・脂肪肝炎+肝癌発症マウス(Alb-Cre TG(+)PTENflox/floxマウス, PTEN KOマウス)を用いた実験を行った。FADS2ノックアウトマウスを用いた実験はまだ十分な数が行えていないため今回の報告では割愛する。PTEN KOマウスでは脂肪肝炎を起こす13-19週齢と肝がんを発症する35-41週齢のマウスを用いて実験を行い、さらにPTEN KOマウスの一部の群には脂肪肝炎を抑制する基質としてアミノ酸グリシンを添加した食餌を摂取させ、脂肪肝炎の経時変化と背景にある脂肪毒性、脂質代謝の関与を解析した。13-19週齢の時点でPTEN KOマウスは血清AST,ALT値の有意な上昇を伴う脂肪肝炎の像を呈し、肝組織中の4-hydroxynonenalの発現が有意に亢進し、肝内の酸化ストレスの増大を示した。この週齢では脂質合成に関与する酵素群には顕著な変化は見られなかったが、抗酸化物質のSOD1およびカタラーゼの発現が低下していた。35-41週齢になるとPTEN KOマウスの肝臓に2.6±1.0個の腫瘍の形成を認めた。この週齢の肝組織では脂質合成に寄与するSREBP1cおよびFASnの発現が有意に亢進していた。また、グリシン投与群では脂肪肝炎、酸化ストレス、脂質合成亢進のいずれも有意に抑制された。以上まとめると、PTEN KOマウスでは短期的には肝内の酸化ストレス亢進による肝細胞傷害、長期的にはde novo脂肪酸合成の亢進が脂肪肝炎の進行を促し、肝発がんに至ったと考えられた。現時点までのデータを学会に発表しつつ、研究を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画のうち、vivoの研究が予定よりもやや早く進行中だが、細胞実験が遅れており、総括して概ね順調に進展、と評価した。肝細胞特異的PTENノックアウトマウスの研究で病態の進展に伴い酸化ストレスと脂肪酸代謝のバランスが変化していく可能性が示されたのは新しい知見であり、また、アミノ酸のグリシンがこれらの病態プロセスに抑制的に働くことを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
肝細胞特異的PTENノックアウトマウスについては現在、リピドミクスによる解析を行っている。また、脂肪酸の伸張酵素・脂肪酸不飽和化酵素の発現についての解析もまだ途上であり、継続して行っていく。FADS2ノックアウトマウスは現在飼育中で、まとまった数を準備してから高脂質・高コレステロールを投与し、脂肪酸代謝が脂肪毒性および脂肪肝炎に与える影響を明らかにしていく方針である。細胞実験の進捗が予定よりも遅れており、今後進展させていく方針である。
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Causes of Carryover |
COVID19の影響で2020年春頃の実験に遅れを生じ、特にin vitroの実験を行えなかったことと、国際学会の多くが中止、Web開催となったために学会参加費、旅費が予定よりも減少した。2021年度はvitroの実験の開始および実験モデルの追加、リピドミクス解析および蛋白レベルの解析をすすめると共に、COVID19渦の影響が低下してくれば、積極的な国際学会への展開を行っていく予定である。
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