2021 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of enhanced hepatotoxicity through fatty acid metabolic imbalance in the progression of fatty liver disease
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20K08315
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
今 一義 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30398672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池嶋 健一 順天堂大学, 医学部, 教授 (20317382)
李 賢哲 順天堂大学, 医学部, 助教 (30758321)
千葉 麻子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40532726)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脂肪酸不飽和化酵素 / PTEN / 肝癌 / 非アルコール性脂肪肝炎 / 自然免疫 / 脂肪毒性 / アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は令和2年度に行った脂肪肝炎関連肝癌モデルの肝細胞特異的Ptenノックアウトマウス(Pten KO)に対するグリシンの脂肪毒性および肝発がんに対する効果のメカニズムを引き続き解析すると共に、脂肪酸不飽和化酵素FADS2のノックアウトマウス(FADS2 KO)を用いた研究を行った。16週齢の段階ではPten KOの肝組織中のカタラーゼ、superoxide dismutase 1、還元型グルタチオンといった抗酸化物質の発現は低下したが、グリシンの摂取により有意に増加した。さらに42週齢のPten KOの肝組織では多数の肝癌を生じたが、グリシン摂取により有意に抑制された。グリシンが肝発がんを抑制した機序について検証を行ったところ、グリシンを投与したマウスの肝組織ではIL12Bの発現が著明に亢進しており、かつCD8陽性細胞の増加が認められた。これらの事象から、グリシンは脂肪肝炎の病態においては過剰な免疫作用を抑制する方向に働く一方で、肝発がんの段階では自然免疫の活性化を介して抗腫瘍に寄与することが想定された。FADS2 KOの実験では、高脂肪・高コレステロール食を摂取させたFADS2ホモ欠損マウスでは著明な線維化を伴う脂肪肝炎を発症したが、ヘテロ欠損マウスであっても高脂肪・高コレステロール食の摂餌により、野生型マウスよりも有意に高度の脂肪肝炎を生じた。FADS2ホモ欠損マウスでは高脂肪・高コレステロール食摂取により特に線維化の進展が顕著であった。この結果は、FADS2の発現は減弱するだけで脂肪肝炎の病態を悪化すること、FADS2の欠損は線維化を進展させること、すなわち脂質代謝制御の不均衡が、脂肪肝炎の病態進展に寄与することを示した。PTEN KOの実験結果は第22回日本消化器病学会週間(JDDW)で主題演題に採択され、11月の米国肝臓病学会の演題として採択され発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝細胞特異的PTENノックアウトマウスを用いた実験では、アミノ酸グリシンの供給による自然免疫の変化が脂肪肝炎と肝発がんの病態に対して、自然免疫を制御することによって抑制する方向に寄与することが明らかになっただけでなく、FADS2ノックアウトマウスの実験では本研究のメインテーマである脂肪酸代謝の不均衡が脂肪肝炎の病態増悪への関与を世界に先駆けて示すことができたため、順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
肝細胞特異的PTENノックアウトマウスを用いた実験では、脂肪酸代謝産物の組成をリピドミクス解析し、脂肪酸代謝酵素の発現の評価と併せて評価する。脂肪酸代謝酵素の発現が異なれば、エピジェネティクス解析を行って脂肪酸代謝の不均衡と肝発がんの関連へのエピゲノムレベルにおける変化の影響を明らかにする。FADS2ノックアウトマウスについては脂肪肝炎・線維化・発がんに対するFADS2活性の影響をより詳細に解析し、in vitroの実験でFADS1およびFADS2の活性を抑制して脂肪酸負荷に対する耐性への脂肪酸代謝不均衡の影響を証明する。これらのプロセスをもって、脂肪肝炎から線維化進展、肝発がんへのNASHの一連の病態プロセスにおける脂肪酸代謝不均衡の影響を解析して、国内の学会および国際学会で発表した上で英文誌にて世界へ公表する。
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Causes of Carryover |
解析用にオーダーした試薬の納入が遅れたため、次年度に持ち越した。
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Research Products
(4 results)