2020 Fiscal Year Research-status Report
創傷の治癒過程に異所性発現するAIDの新規「細胞外マトリクス構築制御」機能の解明
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20K08318
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
岡田 季之 久留米大学, 医学部, 助教 (10607328)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 上皮再生 / 大腸上皮細胞 / AICDA |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性の慢性炎症疾患である潰瘍性大腸炎とクローン病患者の寛解状態を長く維持するためには『粘膜治癒させることが重要』であるが、粘膜の創傷治癒過程に関する理解が不十分である。近年では、基底膜側に存在する間質細胞が腸管上皮幹細胞の恒常性維持と上皮構造のリモデリングに重要な事が報告されている。そこで本研究は、炎症条件下に大腸上皮細胞で異所性発現するAIDが、ECM関連分子の発現調節を介して損傷した大腸粘膜の創傷治癒に重要な間質細胞の種類(バランス)を変化させているか明らかにすることを目的とする。この目的を達成するために令和2年度は、「AID依存的に発現が変化する遺伝子が大腸上皮細胞に与える影響」と「AID依存的に変化する変異部位の同定」を中心に検討を行った。 (1) AID依存的に発現が変化する候補遺伝子の機能解析を行うために、大腸癌細胞株を用いてCRISPR/Cas9により候補遺伝子を欠損させることで、上皮細胞の遊走能や膜透過性などに影響を与えることを明らかにした。 (2) AID依存的に変化する変異部位の同定を行うために、野生型マウスとAID欠損マウスにDextran Sulfate sodium (DSS)を投与することで急性大腸炎を誘導し、回復期に移行したマウスの大腸クリプトを精製し、DNAとtotal RNAを抽出した。その際、コントロールとしてマウスの耳からも同様にDNAとtotal RNAの精製を行った。現在、そのサンプルを用いた次世代シーケンス解析を行う準備を行っている。 (3) 野生型およびAID欠損マウスに低濃度のDSS急性大腸炎を3サイクル繰り返し投与することで慢性腸炎を誘導し、異所性発現するAIDの影響を検討した。その結果、急性腸炎で認められた表現型が野生型と比してさらに顕著に認められることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CyTOF helios 解析を行うことで、炎症によって異所性発現するAIDが間質細胞の種類を変化させる可能性を検証する予定であったが、研究支援先にて解析を行う場合、研修を受ける必要がある。しかしながら、COVID19による影響で困難なため遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)『AID依存的に変化する変異部位の同定』に関しては、解析の準備が整い次第、全ゲノムシーケンス解析を行う。その後、その解析で明らかにした遺伝子変異部位の実証を行い、遺伝子の発現に与える影響を明らかにする。 (2) 『異所性発現AIDが、間質細胞のバランスに与える影響』に関しては、COVID19次第ではあるが、落ち着き次第解析を行う予定である。 (3)慢性腸炎におけるAIDの役割の検討に関しては、まずは再現性の確認を行い、急性腸炎モデルと比してどのような遺伝子の発現が変化しているか検討する。
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Causes of Carryover |
「次年度使用額が生じた理由」 行う予定にしていた受託解析が、次年度となってしまったため。 「使用計画」 持ち越した研究費を使用して、前年度に予定をしていた受託解析を行い使用する予定である。
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