2020 Fiscal Year Research-status Report
サポウイルスのリソース確保および消化器感染増殖メカニズム解明のための研究
Project/Area Number |
20K08320
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
岡 智一郎 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (50356242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 弘隆 国立感染症研究所, 安全実験管理部, 主任研究官 (00332362)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サポウイルス / 十二指腸由来細胞 / 胆汁酸 / ウイルス増殖系 / ウイルス継代 / ウイルスストック |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトサポウイルスはノロウイルス同様、下痢嘔吐原因ウイルスのひとつで、広い年齢層で感染・発症し、再感染や食中毒を含む集団感染事例も報告されている。しかし、1970年代の発見以降、このウイルスの培養や実験動物を用いた増殖系は存在せず、不活性化条件検討や感染・増殖のメカニズムはわからないままであった。
本研究ではヒトサポウイルスの増殖系の構築に世界で初めて成功し、論文発表を行った (Takagi & Oka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2020 Dec)。
ヒト糞便中のサポウイルスは生理的な感染・増殖部位と考えられるヒト十二指腸由来細胞で、十二指腸に高濃度で存在する抱合型胆汁酸を培地中に添加することで、明瞭な細胞壊死は示さないものの、効率的なウイルス増殖(培養上清中に1×10の10乗ウイルスゲノムコピー/mL)とウイルス継代が可能であった。複数のヒトサポウイルス株 (GI.1, GI.2, GII.3株)が効率的に増殖できる条件を見出し、これらすべての株について安定的なウイルス継代、スケールアップ、ウイルスストックの調製に成功した。これによりヒトノロウイルスでは構築できていないウイルス陽性糞便に依存しない分離株を用いた研究が初めて可能になった。また複数株のウイルス増殖系が構築できたことで、ヒトサポウイルスが加熱や紫外線の処理に対し、一定の抵抗性を有し、株間によって抵抗性が異なることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数のヒトサポウイルス株が効率的に増殖できる条件を見出し、これらすべての株について安定的なウイルス継代、スケールアップ、ウイルスストックの調製に成功し、国際誌に論文発表も行った (Takagi & Oka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2020 Dec)ため。この他、サブクローニングしたヒト十二指腸由来細胞株を用いたヒトサポウイルス株の増殖能の差異の検討、増殖株の配列を有するリバースジェネティクスコンストラクトの作成も予定どおり進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト由来のサポウイルスは、現在18種類(GI.1-7, GII.1-8, GIV.1, GV,1-2)の遺伝子型に分類される。 GI.1, GI.2, GII.3以外の遺伝子型株の増殖を評価している。リバースジェネティクス系を用いた感染性ウイルス産出も検討する。さらに、より感受性の高い細胞や感受性細胞クローンと非感受性細胞クローンの分離と、ウイルス増殖に必須な胆汁酸、増殖効果のない胆汁酸、胆汁酸非添加の感受性細胞間の発現遺伝子の解析を組み合わせ、サポウイルス感染・増殖に関与する細胞側因子の検索・解析を実施する。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが、令和3年4月1日以降となったため。当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和2年度分についてはほぼ使用済みである。
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