2020 Fiscal Year Research-status Report
肝疾患治療用細胞シートの液性因子に着目した新規肝硬変治療法の開発
Project/Area Number |
20K08331
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
板場 則子 鳥取大学, 医学部, 助教 (70457167)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肝硬変 / セクレトーム / MSC / 線維症 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度応答性培養皿上で間葉系幹細胞(MSC)にWnt/β-catenin経路阻害剤IC-2を添加し作製する肝疾患治療用細胞シートは、マウス肝表面へ移植した際に、IC-2未処理のMSCシートよりも強い線維化抑制効果を示す。この線維化抑制効果は、移植肝葉とは別の肝葉でも認められることから、細胞シートより産生される液性因子が肝線維化抑制効果に重要である。本研究では、肝線維化抑制作用を示す因子を同定し、その肝線維化抑制効果を肝硬変モデルマウスで検証し、Proof of Concept (POC)を確立することを目的とする。 IC-2処理MSCの濃縮培養上清からなるセクレトームが肝線維化の主たる要因となる肝星細胞活性化を抑制するが、本研究では新たにラット腎線維芽細胞の上皮間葉転換(EMT)による腎線維症モデルのin vitro評価系を使用することで、IC-2処理MSC由来セクレトームが腎線維症モデルにおいても同様に、αSMA, collagen1a1, Fibronectinの発現抑制作用を示すことを認めた。すなわち、in vitro評価系においてIC-2処理MSC由来セクレトームが肝臓だけでなく腎線維症に対しても線維化抑制作用を示す可能性が示唆された。また、セクレトームを限外ろ過フィルターにより分画した際には約10kDaから約30kDaの分画および約100kDa以上の分画が肝星細胞活性化抑制効果を示すデータを得ていることから、今後該当の分画に含まれるタンパクを質量分析により網羅解析することにより、線維化抑制の本態となる分子の抽出を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により研究活動の制限が生じたことから、計画的な研究遂行、特に動物実験の実施が困難となり、実験計画に遅れが生じた。しかし、in vitroでの評価系を加えることにより、肝疾患治療用細胞シートの液性因子、特にセクレトームには肝硬変だけでなく他臓器の線維症に対しても線維化抑制作用を示すことを支持するデータが得られており、次のステップとなる網羅的解析に進めることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に遅れが生じていることから、次年度にセクレトーム/エクソソームの網羅的解析およ びin silicoでの候補因子の抽出作業を行う。すでに、約10kDaから約30kDaの分画および約100kDa以上の分画に肝星細胞活性化抑制因子が含まれることを明らかにしているので、分画後のセクレトームを質量分析(MS分析)によるタンパクの網羅的解析に供することにより、当初の計画よりも効率よく候補となる線維化抑制因子の抽出を実施し、時間短縮を図る。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により研究活動の制限が度々生じたことから、計画的な研究遂行、特に動物実験の実施が困難であったため、実験計画に遅れが生じた。動物実験で予定していた消耗品費に加えて、当該年度に予定していた受託解析が進捗の遅れにより次年度に実施することとしたため受託解析費用分、次年度使用額が生じた。令和3年度中に、本来予定していた消耗品および受託解析費用に使用する予定である。
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