2020 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー代謝プロファイリングに基づく新規肝不全治療の開発
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20K08337
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
西川 太一朗 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90433250)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肝細胞 / 肝不全 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性肝疾患の進行により肝不全に至った患者に対して、肝臓移植の代替となる適応の広い低侵襲な慢性肝不全の治療法を開発することは、肝臓臨床の現況において重要な研究テーマである。本研究は、慢性肝不全の病態をひき起こしている肝細胞のTCA回路および酸化的リン酸化経路のエネルギー代謝異常に着目し、代謝関連遺伝子およびミトコンドリアを標的とした手法により、肝細胞のエネルギー合成能の改善、さらには肝細胞が有する総合的な代謝機能の改善が得られるかについて検証し、ヒト慢性肝不全に対する新規治療の開発に資する治療標的の同定を目的とする。 その実現に向けた取り組みとして、今年度の研究成果は主に以下の2点に分けられる。 1.ヒト慢性肝不全の病態に類似したマウスモデルの作出のため、 ①四塩化炭素(CCl4)の腹腔内投与②チオアセトアミド(TAA)の腹腔内投与の2種のマウスモデルで肝の評価を行ったが、一過性の肝不全病態はみられるものの非代償期肝硬変に相当する不可逆性は得られなかった。そこで、線維化改善がより進展しやすいラットモデルへ変更し、CCl4の腹腔内継続投与により理想的なモデルを確立できた。 2.上記のラットモデルから採取した分離肝細胞をin vitroの条件で培養し、細胞機能について解析を行った。その結果、正常肝細胞と比較して病態肝からの肝細胞ではATP合成能の低下と、解糖系およびミトコンドリア経路での代謝機能の変化が確認できた。 今後、ラットモデルでの肝不全病態改善の治療標的を探索するため、ヒト肝不全肝細胞とラットモデル肝細胞に共通した代謝プロファイリングの変化を、mRNAアレイ解析にて進めていく予定をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットモデルでの肝不全病態の誘導、その持続性が確認でき、治療効果の検証に必要な動物モデルの作出が可能であった。これまでに得たヒト肝細胞サンプルでのデータとの比較検討をまじえて、さらに本年度の検討課題を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットモデルの作出およびヒト症例からの肝不全肝細胞のサンプリングを引き続き行い、解析に必要なサンプル数を確保する。 ついで、ラットモデルの肝不全肝細胞でエネルギー産生能の低下を引き起こしている分子生物学的な標的について検証を行う。まずはmRNA発現アレイを行い、肝不全病態で有意に変化を受けている代謝シグナルおよび標的因子の探索を行う。 また、ヒト肝細胞サンプルですでに得た代謝プロファイリングのデータと比較検討し、治療効果の検討をすすめる標的因子の絞り込みを行う。
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Causes of Carryover |
本年度は研究室内で所有する資材・試薬を一部活用し、研究を実施したため、助成金に次年度使用額が生じた。本年度は、前年度分予算とあわせて、試薬や動物実験への費用にあてる予定である。
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Research Products
(7 results)