2020 Fiscal Year Research-status Report
TCF-4 isoform高精度発現解析による肝癌特異的Wntシグナル異常の探求
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20K08345
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
古賀 浩徳 久留米大学, 医学部, 教授 (90268855)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | TCF-4 / Wnt / isoform / variant |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,肝細胞癌におけるTCF-4 isoformの高精度解析を実現するため,ペプチド核酸(Peptide Nucleic Acids, PNA) を用いた特異的qPCRシステムを構築した.これにより,従来,densitometryによる半定量的解析しかできなかったTCF-4 isoformの測定が高精度に可能となった. 次に,種々のヒト癌細胞を用いて4種のTCF-4 isoform(A, B, J, K)を測定した.使用した細胞は,ヒト肝細胞癌細胞株(HAK-1A, HAK-1B, Hep3B),胃癌細胞株(MKN74),膵癌細胞株(PANC1, BxPC-3),大腸癌細胞株(HCT-119, HT-29)の8種類である.胃癌や大腸癌でJ型の発現が高いことがわかった.このJ型は,これまで我々が肝癌の悪性化と関連するisoformとして注目してきたタイプである(Exp Cell Res 2011; PLoS One 2012; Cancer Lett 2013).この結果を踏まえ,さらに特徴的形質を持った5種の肝癌細胞株(HAK-5(肉腫様肝癌),KMCH-1, KMCH-2(混合型肝癌),HepG2(肝芽腫))とヒト胎児由来不死化肝細胞(OUMS-29)においてもisoform解析を行った.その結果,J型はHepG2やOUMS-29でも比較的強い発現が見られた.腺癌形質を有する混合型肝癌ではJ型の発現増強は見られなかった.肝よりもむしろ胃や大腸などの消化管の癌のほうがTCF-4 J型が強く発現していて,Wnt/beta-catenin/TCF-4経路の活性化が起こっている可能性が示唆された.また,TCF-4 isoformのプロファイリングを行うことで,canonical pathwayが活性化している癌(大腸癌や胃癌)とそうでない癌(肝癌や膵癌)とに分けることができる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定対象の細胞株の種類や数には変更があったが,測定法を確立し,その精度も検証できている.想定したように,癌の悪性化と関連するJ型が癌種や部位によって特徴があることがわかってきたので,概ね順調と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞株においてJ型の発現が強かった大腸癌について,切除組織からのRNAを用いて検討を続けたい.TCF-4 isoformのプロファイリングを行うことで,canonical pathwayが活性化している癌(大腸癌や胃癌)とそうでない癌(肝癌や膵癌)とに分けることができそうであり,さらに癌種特異的に高発現するisoformの同定もできると考えている.その点を探求し,Wntシグナルを制御している新たなメカニズムに迫りたい.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により,多くの学会がWeb開催となったため,旅費としての支出が減った.この分は次年度に受託研究費などとしてさらなる解析費用として計上する予定である.
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