2023 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト微生物叢と代謝物質の相互作用に着眼したアスピリン性腸粘膜傷害のメカニズム解明
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20K08366
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
河合 隆 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (40266490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 尚義 東京医科大学, 医学部, 准教授 (10562788)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床情報収集、糞便収集、サンプル解析、Bioinformaticsの解析体制を確立し、サンプル収集を行った。計5,200例の糞便サンプルのショットガンメタゲノム解析を行った。アスピリン使用者と非アスピリン使用者では患者背景が異なるため、プロペンシティスコアマッチングにて患者背景を揃えてから、腸内細菌、機能代謝遺伝子、腸内真菌の解析を行った。PPI使用者も同様な方法で統計解析した。 アスピリン使用群と非使用群の2群間において、生物学的多様性(β-diversity)は有意に異なったが、軽度であった。α-diversityは変化を認めなかった。一方、PPIはα-diversityとβ-diversity両方の有意かつ顕著な差を認め、α-divestityはPPI使用者では増加を認めた。アスピリン使用と有意に関連する複数の腸内細菌種を同定した。具体的には、アスピリンは、Blautia属の減少、Strepotococcus属や Lactobacillus属が増加する知見を得た。また、ワルファリン、DOAC、チエノピリジン系薬剤とアスピリンでは異なる菌種の変化を来すことも判明した。一方、PPIで変動する菌種とアスピリン使用で変動するStreptococcusやLactobacillusが増加する点は一致したが、PPIは多数の口腔内由来の細菌種が増加する点、酪酸産生菌が低下する点が異なることが判明した。単剤使用と比較し二剤併用による腸内細菌変動の相加効果を認めた。さらに、腸内真菌叢の解析の結果、アスピリン使用者では有意な変動は認めなかったが、PPI使用者は特定の腸内真菌種の変動を見出すことができた。 アスピリンやPPIによる特定の腸内細菌種変化、細菌の機能代謝遺伝子の変化、腸内細菌の変化、PPI併用にともなう腸内細菌相加効果などの新知見を得た。
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