2021 Fiscal Year Research-status Report
A study for intestinal archaea in human health and disease
Project/Area Number |
20K08384
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
三島 義之 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (30397864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉木 秀幸 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (00421842)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アーキア / 炎症性腸疾患 / 腸内細菌叢 / 腸管免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒト腸管アーキアのプロファイリング、アーキアが炎症性腸疾患(IBD)へ及ぼす影響の検討、未知アーキアの培養と機能解析を目的としている。これらにより、腸管アーキアがヒトの腸管免疫を介して腸粘膜のホメオスターシス維持にどうような影響を与えるのかを検討できる。 これらの研究を遂行する上で、腸粘膜生検サンプルからのアーキアDNA抽出は本研究の肝と考えている。というのも、アーキアは強固な外膜を有し100℃以上の高熱や高酸下などの劣悪環境でも生息できるものもあり、通常の手法では十分なDNA抽出が困難な可能性がある。そのため未知のアーキアが消化管に存在する可能性が十分にあると考えられる。そこで、産業技術総合研究所においては、通常の手法以外にも新たな手法を検討中である。具体的には、アーキア解析(Tamaki et al. Nature 2020)、ヒト糞便からの微生物抽出解析(Tamaki et al. Microbiol Resour Announc 2021)などの研究を通じて、本研究に関連した微生物関連の手技の向上を図っているところである。 全体の進捗としては、やや遅れているが、これは新型コロナウイルス感染症の影響によって 双方への往来ができず、貴重なヒトサンプルを用いた詳細な検討が困難であったことが大きい。ただし、産業技術総合研究所においてマウス腸管アーキア解析を先行して進めていることと、当大学においては症例数が着実に増えており、計画を微調整して次年度に臨む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アーキアを含めた粘膜関連微生物の検索と、腸粘膜のサイトカイン遺伝子発現測定をおこなうため、これまで50名以上のIBD患者から本研究への同意を頂き、糞便サンプルの提出と消化管内視鏡施行時に生検サンプルを採取した。現段階でサンプル採取に関連する合併症等もなく、順調に推移している。 このサンプル中の微生物由来のDNA抽出は、上記の通り、アーキアを含めた難培養微生物の鍵となる部分であるため、共同研究者の玉木氏に当施設内で定期的に直接指導いただく予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で往来ができず、本年度も不可能であった。そのため、オンラインでの討論しかできず、貴重な患者サンプルを用いた検討はまだできていない。 一方で、産業技術総合研究所内で、マウス小腸粘膜と糞便におけるアーキア解析をおこない、その種類や分布を検討した。結果、多数のMethanobacterialesに属するアーキアが検出され、そのabundanceも小腸の中でも肛門測に向かって増加していることを見出した。さらに、アーキアの研究(Tamaki et al. Nature 2020)、ヒト糞便からの微生物抽出等の研究(Tamaki et al. Microbiol Resour Announc 2021)を通じて、本研究に関連した新たな知見や微生物関連の手技の向上に励んでいるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
アーキアDNA抽出に関しては、産業技術総合研究所において、マウス腸サンプルで確認の作業が終了したのちに、速やかにヒトのサンプル解析に移りたいと考える。つまり、新たに考案されたプロトコールを用いて当施設でもマウスの腸で何度か練習し、その後ヒトサンプルからのDNA抽出を試みる予定である。新型コロナウイルス感染症の影響が早期に緩和され、双方の施設に往来が可能になり、研究が進むことを期待している。
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Causes of Carryover |
令和3年度は新型コロナ感染症蔓延による国内・海外移動が不可能であったため、主に旅費に予定していた経費を使用せず、また試薬購入もわずかであったため、令和4年度に繰り越しとした。 国内移動が緩和された際には、予定よりも頻回に玉木氏に実験指導してもらう機会を設け、速やかに実験の遂行が行えるようにする予定である。このプロセスは本研究の律速因子でもあり、重点的に費用(国内旅費や試薬購入)をかけたいと考えている。 また、それでも余剰金が生じた際には、マウスの腸管アーキア解析や、難培養微生物の培養方法確立のために使用したいと考えている。
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