2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K08389
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荻野 治栄 九州大学, 大学病院, 助教 (80621705)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 粘膜バリア機能 / 直腸環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎は直腸から炎症が生じ、口側に伸展する難治性疾患である。直腸に発症のトリガーとなる因子がある可能性があり、今回潰瘍性大腸炎(UC)寛解期患者とコントロール(ポリープ切除患者)群を比較検討し、UC患者における直腸環境の特殊性を解析した。 直腸・結腸の粘膜バリア機能を、内視鏡下のインピーダンス測定とex vivoのウッシング・チャンバーにて評価し、UC寛解期とコントロール群を比較検討した。盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸では差がなかったが、UC寛解期の直腸においてのみコントロール群と比較して有意にバリア機能が低下していることが分かった。 さらに、各群の直腸と盲腸から組織を採取し、病理学的評価および炎症性サイトカインやtight junction, ムスカリン受容体に関連する遺伝子発現をreal time q PCRにて評価した。組織的評価ではいずれも炎症スコアにおいて有意差はなかったが、炎症性サイトカンではIL-1βとIL-6がUC寛解期直腸で有意に上昇していた。その他のサイトカインでは差がなかった。また、Tight junction関連分子の遺伝子発現は、ZO-1. Occludin (OCLN), Claudin1では差はなかったが、Claudin 2でUC寛解期直腸にて有意に上昇していた。一方、遺伝子発現レベルとインピーダンス値の相関を見たところ、IL-1β、CHRM2,3にて逆相関を認めた。 既報では、IL-1βの上昇にてmicroRNA (MIR200C-3p)が転写因子を介して、OCLNの翻訳をブロックすることが報告されているが、我々の研究ではOCLNの低下はなく、Claudin 2が上昇していた。Claudin2はtight junctionにporeを形成することに関与しており、これが粘膜バリア機能に関与している可能性が示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前回よりさらに症例数を増やし、現在UC寛解群29例、対照群18例を集積している。バリア機能に関する統計学的評価は症例数が増えても結果に変わりなく、UC寛解期の直腸のみにおいてバリア機能が低下していた。さらにvalidationするために、研究期間の前半と後半に分けてバリア機能に関する解析を再検討したところ結果は同等であった。これはデータのバラツキが小さく、信頼性が担保されたことを示している。 このバリア機能に影響を及ぼした因子を同定するために、直腸と盲腸から組織を採取し炎症性サイトカインやtight junction、ムスカリン受容体に係る遺伝子発現レベルを評価し、部位や対象群間での統計学的解析、およびそれぞれのインピーダンス値と遺伝子発現の相関性を検討している。腸内細菌叢に関しては、現在解析を進めている。粘膜固有層内の単核球解析に関しては、検体採取量が十分ではなく有用な解析は出来ていないため、生検回数をもっと増やす必要があるが出血のリスクを加味して行う必要があり、現在プロトコールを再検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
潰瘍性大腸炎は再燃寛解を繰り返す疾患であり、再燃を来す際にも主に直腸から炎症が生じていく。再燃に影響を及ぼす因子としてはは様々な報告があるが、バリア機能に関する報告は少ない。今後、寛解期UC患者の治療を継続しながら経過観察を行い、バリア機能の低下が再燃に影響を及ぼしているかの検討も追加する予定。
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Causes of Carryover |
計画は概ね順調に来ているが、粘膜固有層内の単核球分離に関しては採取量が十分ではなく、当初の計画からの変更が必要な状況であり、そのため次年度の使用額が生じています。現在、計画を修正して対処中です。
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