2021 Fiscal Year Research-status Report
マイオカインdecorinによるNASH関連肝癌抑制効果の検討
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20K08395
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
川口 巧 久留米大学, 医学部, 准教授 (00320177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 暖 久留米大学, 医学部, 助教 (40723987)
橋田 竜騎 久留米大学, 医学部, 講師 (40754841)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マイオカイン / デコリン / 肝細胞癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝硬変や肝癌の主な成因である。アジア諸国に多い非肥満NASH患者では骨格筋量の低下がNASHの発症に関与することが明らかになっている。NASH患者において、骨格筋量の低下は、インスリン抵抗性を惹起し、肝線維化進展や肝発癌に関わる。さらに近年、骨格筋は内分泌器官としてマイオカインと総称されるホルモンを分泌することが明らかとなっている。これまでに、我々は、マイオカインの一種であるdecorinの低下が肝癌患者の独立予後危険因子であることを明らかにしてきた。decorinは、TGF-βの直接阻害を介した抗線維化作用と、腫瘍細胞の増殖抑制作用も有することも報告されている。本研究の目的は、肝癌マウスモデルとヒト肝癌細胞株を用いて、decorinが非アルコール性脂肪肝炎関連肝線維化と肝発癌におよぼす影響を検討することである。昨年度、我々は、decorinが容量依存性に肝癌細胞の細胞数を減少させることを明らかにした。また、decorin添加によるアポトーシスの増加は認められなかったことから、decorinは肝癌細胞株の増殖を直接的に抑制することが示唆された。本年度、我々は、ヒト培養肝癌細胞株(HepG2細胞)の培養上清にdecorinを添加し、decorinが肝がん細胞の細胞周期におよぼす影響を検討した。フローサイトメーターを用いて解析を行った結果、decorinはHepG2細胞にG2/M arrestを引き起こすことが明らかとなった。また、decorinはcyclin-dependent kinase 1活性低下とcdc2とcdc25cの発現低下を認めた。さらに、decorinはNASHモデルマウスの肝線維化と肝発癌に対して抑制的に作用することも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた細胞周期の解析およびNASHモデルマウスを用いた解析は予定どおり進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果より、decorinは肝癌細胞の細胞周期を調節することで増殖を抑制する可能性が示唆された。次年度はメタボロミクスおよびプロテオミクスによるマルチオミクス解析にてdecorinが肝癌細胞の代謝におよぼす影響を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
米国肝臓学会がWEB開催となったことから、成果発表旅費が不用となった。また、消耗品として計上した実験用試薬(抗体)が比較的安価に購入できた。このため、「次年度使用額(B-A)」欄が「0」より大きくなった。次年度は、メタボロームおよびプロテオーム解析のために、翌年度分として請求した助成金と合わせた額を本研究全体で使用する。
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