2020 Fiscal Year Research-status Report
心臓特異的な血管内皮細胞のアンギオクライン因子と分子学的特徴の解明
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20K08397
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
横山 真隆 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (20514871)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アンギオクライン因子 / 心疾患 / 心臓血管内皮細胞 / 心筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はマウス心臓から単離した血管内皮細胞をシングルセル解析し、申請段階で選び出していた4つの転写因子の相互発現を確認した。その結果、心臓特異的な血管内皮細胞の発現分子、特に脂質輸送に関わる分子群の発現においては、単独の転写因子をしぼりこむことはできなかった一方で、複合的に転写因子が作用していることがわかった。単離した心臓血管内皮細胞において、各転写因子の発現はそれぞれ53-77%にみられ、95%の細胞では何らかの因子を発現していた。興味深いことに、Fabp4やPpargなどに代表される脂質関連分子の発現は4転写因子のうち3因子の重複発現を認めるものと高い相関が認められた。 そこで非心臓血管内皮細胞である臍帯静脈内皮細胞に4遺伝子の過剰発現を行ったところ、単因子では不十分であった心臓血管内皮細胞の模倣化が4因子重複過剰発現によって再現できた。これに用いた4つの転写因子の発現ベクターをもちいてtag蛋白でChIPアッセイを行った。当初シークエンス配列の特性からFlag-tag/HA-tagのいずれかがベクターに入っていたが、HA-tagでの沈降が芳しくなかったことから、全ての4因子ベクターをFlag-tagに入れ替えたところ、いずれも解析に適したピークコールを確認できた。現在、同時に行ったATACseqサンプルと合わせて特異的な発現部位またRNAseqで得られた発現結果との複合解析を開始している。 マウス虚血心臓に対して、転写因子過剰発現した血管内皮細胞を移植し、3周後のタイミングで再回収を行った。この細胞で行ったシングルセル解析から、生着に関わる因子探索を試みたが、予想外に複数クラスターに分類された。可能性として十分な生着ができていない、あるいは複数クラスターの役割分類がされていることを現在想定している
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、マウス心臓からのシングルセル解析を行うことができた。scRNAseqであった場合、高発現するリードに解析をとられてしまうが、今回特異的な因子を選ぶためにsingle cell qPCRを併用。これにてターゲット分子を絞ったと同時に、それに関連する標的転写因子との相関が解析できた。一方で虚血心臓に対するアプローチに関しては、本年他研究グループよりNature Commsに発表がなされた。その結果は申請者らが想定したものと類似しており、そのデータベースを用いて解析を追加することを考えている。また、リプログラミングによる心臓血管内皮細胞の模倣アプローチは、当初考えていたtagでのpull downがうまくいかず工夫が必要であったが、上記のように新規にベクターを作成することで問題を解決することができた。リプログラミングを行った血管内皮細胞は、虚血心筋への移植系が完成した。複数回の試みにより、生着の程度に差がみられることもわかってきた。その原因として、導入した転写因子の発現量もしくは下流のターゲットとなる鍵因子の発現制御に一定のウインドウがあるのではないかと想定している。それを解析するために、移植前後での細胞の性質をシングルセル解析するpreliminaryの実験系まで作れていることは、今後の研究に進展できる状態にある。また、これまでに行ってきたシークエンスデータを複合的に解析するため、バイオインフォマテックの解析技術を学んでいるとともに、共同研究できる研究者と連携が取れたこと大きな進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は2年目として計画していた内容を順次進めていく。具体的には、リプログラミングした血管内皮細胞でおこなったRNAseq/ChIPseq/ATACseqのデータが直接の変動調節を受けた分子群ならびに複合的に変動を受けた分子群の絞り込みを行っていく。次に、リプログラミングする細胞を1因子・2因子・3因子・4因子それぞれの組み合わせ15種類+コントロール細胞を混ぜ合わせてマウス虚血心臓に移植する実験を行う。これにより、生着に関連した特異的・最低限必要な組み合わせが明らかになると考えている。生着に大きく寄与したエフェクター分子、特にサイトカイン・接着因子などのAngiocrine因子について注目し、それらの分子をノックダウンした細胞で生着への関連を明らかにする予定である。さらに、このリプログラミング血管をin vitro 上で培養し、これにマウス胎児単離心筋と共培養する。この心筋を回収し、RNAseqを行うことで、血管内皮細胞から影響を受けた発現変動遺伝子を4因子の有無で明らかにする。これにより心臓血管内皮細胞への特異化がもたらす心筋への影響を解析できる。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] TAS4464, a NEDD8-activating enzyme inhibitor, activates both intrinsic and extrinsic apoptotic pathways via c-Myc-mediated regulation in acute myeloid leukemia.2021
Author(s)
Ochiiwa H, Ailiken G, Yokoyama M, Yamagata K, Nagano H, Yoshimura C, Muraoka H, Ishida K, Haruma T, Nakayama A, Hashimoto N, Murata K, Nishimura M, Kawashima, Y, Ohara O, Okubo S, Tanaka T
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Journal Title
Oncogene
Volume: 40
Pages: 1217-1230
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Adaptable durable human endothelial cells for organogenesis and tumorigenesis.2020
Author(s)
Palikuqi B, Nguyen TD, Pellegata A, Liu Y, Gomez-Salinero MJ Geng F, Schreiner R, Zumbo P, Zhang T, Kunar B, Yokoyama M, Witherspoon M, Han T, Tedeschi MA, Scottoni, F, Lipkin S, Dow L, Elemento O, Schwartz R, XiangJ, Shido K, DeCoppi P, Rabbany YS, Rafii S.
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Journal Title
Nature
Volume: 585
Pages: 426-432
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] コルチゾール産生腺腫における新規PRKACA変異同定と機能解析2020
Author(s)
樋口 誠一郎, 高 躍, 姚 躍, 大和 梓, 橋本 直子, 永野 秀和, 中山 哲俊, 西村 基, 山形 一行, 横山 真隆, 藤井 陽一, 小川 誠司, 田中 知明
Organizer
第93回日本内分泌学会学術総会
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