2021 Fiscal Year Research-status Report
脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた血管新生療法の分子基盤探索
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20K08401
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 玲 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (70343689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
室原 豊明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90299503)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脂肪組織由来間葉系前駆細胞 / 重症虚血肢 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症虚血肢(CLI)患者5例の患肢に脂肪組織由来間葉系前駆細胞(ADRCs)を移植したところ、いずれの症例も改善効果を認めた。ADRC移植後の血液中の血管前駆細胞(CD34陽性細胞及びCD133陽性細胞)数は、一過性に上昇し、 VEGF-A165b/VEGF-Aは、有意に低下していた。筋芽細胞を用いた検討では、ADRC上清液の添加で、VEGF-Aの発現増加とVEGF-A165bの発現低下を認め、マクロファージへのADRC上清液添加は、CD206陽性細胞の発現増加とTNF-αの発現低下を認めた。このようにADRCは、骨格筋細胞のVEGF分泌を調節して血管新生を促進させ、マクロファージにおいて、抗炎症作用を示すことで組織修復に加担する可能性が示唆された。さらに、マウス創傷治癒モデルを用いた検討では、ADRCs、ADRC培養上清液のいずれの投与においても骨髄由来間葉系細胞投与群やコントロール群と比して、創傷治癒効果が増強していた。 CLI患者の種々の微量元素と下肢病変部のSkin perfusion pressure(SPP)値の関連を検討したところ、血中亜鉛濃度とSPP値に有意な相関関係を認めた。また、亜鉛欠乏マウスに下肢虚血モデルを作成したところ、著明な血管新生能低下を認めた。その機序として、亜鉛欠乏に伴う酸化ストレスの増加が影響していると考えられた。 以上から、CLI患者への自己ADRC移植は効果的で、その機序として、血管前駆細胞の動員やVEGF分泌調節による血管新生促進効果と患部組織での炎症抑制効果、創部での創傷治癒促進効果が考えられた。また、CLI患者では亜鉛が欠乏しており、亜鉛欠乏は血管新生能低下に影響を与えることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的の一つは、脂肪組織由来間葉系前駆細胞(ADRCs)を用いた血管新生療法における治療効果を推測するバイオマーカーの探索と効果機序の解明にある。これまでに、血中の血管前駆細胞数やVEGF-A165b/VEGF-A ratioが重症虚血肢(CLI)患者に対するADRC治療のバイオマーカーになりうる可能性を見出した。また、治療効果の機序として、ADRCが骨格筋細胞のVEGF分泌を調節して血管新生を促進させること、マクロファージにおいて、強力な抗炎症作用を示すことを明らかとした。また、マウス創傷治癒モデルを用いた検討では、ADRCが創傷治癒促進効果を有することも見出した。さらにCLI患者では亜鉛が欠乏しており、亜鉛欠乏が血管新生能低下に影響を与えることが明らかとなったことから、今後ADRC移植が与える影響を検討する予定である。これらの知見は、すでにScientific Reports誌やJVS Vasc Sci誌に発表しており、本研究は概ね順調に進展しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1) ADRCsを用いた血管新生療法の治療効果を予測するバイオマーカーの探索を引き続き行う。2) 創傷治癒におけるADRCsの役割検討を引き続き行う。特に、マウス創傷治癒モデルを作成し、ADRCの創傷治癒効果とその機序(特にシグナル伝達経路)に関して検討を進める。3) ADRC治療のより効率的な効果的な治療方法を探索する。4)肥満度や生活習慣病の背景により、ADRCの血管新生能やタンパク分泌能に違いがあるのか機能解析を行っていく。
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Research Products
(8 results)