2022 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた血管新生療法の分子基盤探索
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20K08401
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 玲 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (70343689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
室原 豊明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90299503)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脂肪組織由来間葉系前駆細胞 / 重症虚血肢 / 血管新生 / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症虚血肢(CLI)患者29症例/34対象肢に脂肪組織由来間葉系前駆細胞(ADRCs)を移植し, 6ヶ月のフォローを完遂した。その結果、周術期および観察期間6ヶ月の間で、死亡者および細胞移植関連有害事象は認められず、大切断回避率が94.1%と非常に良好な結果が得られた。また、安静時疼痛の程度や潰瘍サイズ、6分間歩行距離、いずれも大幅に改善した。ADRC移植を行なった5名の患者のVEGFとCRPの推移を検討したところ、血管新生因子のVEGF-Aと抗血管新生因子VEGF-A165bの比(VEGF-A165b/VEGF-A ratio)は1ヶ月、6ヶ月後に大きく低下しており、血管新生促進の方向に働いていた。また炎症の指標であるCRPは低下の傾向を示した。次に、ADRC移植に伴う効果に肥満度や生活習慣病(糖尿病、高血圧等)の有無が影響していないか否か、糖尿病のないBMI21の方のADRCsと糖尿病を有するBMI30の方のADRCsをサイトカインアレイにて比較検討を行った。その結果、IL-6やGDF-15の発現が糖尿病合併肥満患者のADRCで増加していた。さらに、マウス創傷治癒モデルを用いた検討では、ADRCs、ADRC培養上清液のいずれの投与においてもコントロール群と比して、移植後1,3,5,7,9,11,14日目の創傷治癒効果が増強していた。また、創部周囲皮膚組織をCD31免疫染色にて評価したところ、ADRCs、ADRC培養上清液のいずれの投与においても、コントロール群と比較して、移植後14日目の創部周囲の微小血管の増加効果が確認された。以上から、CLI患者への自己ADRC移植は効果的で、その機序として、VEGF分泌調節や患部組織での炎症抑制効果、創部での創傷治癒促進効果などが考えられた。また、肥満や糖尿病などの基礎疾患の有無がADRC移植の効果に影響を与える可能性が示唆された。
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