2020 Fiscal Year Research-status Report
脳内環境を保持するグリンパティックシステムによる循環恒常性制御メカニズム解明
Project/Area Number |
20K08407
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
岸 拓弥 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 教授 (70423514)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アストロサイト / 心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は慢性心不全におけるグリンパティックシステムの時空間的解析を行った。モデル動物として、収縮不全型心不全モデル(冠動脈結紮誘発心筋梗塞)は心筋梗塞1, 7, 14, 28日後に、拡張不全型心不全モデル(Dahl食塩感受性ラットへの食塩負荷)は食塩負荷開始6週, 12週, 16週に、重症心不全モデルラット(自然発症高血圧ラットへの経口塩分負荷+アンジオテンシンII持続静脈内投与)は負荷開始2週, 4週, 6週後に脳の頭側延髄腹外側野・延髄孤束核・視床下部室傍核を取り出した。これらは全てすでに過去の研究で行ってきた手法である。評価は、取り出した各脳部位において、アストロサイトの形態・数およびアクアポリン4発現を免疫組織学的に評価した。その結果、収縮不全型心不全モデルでは7日後にアストロサイトの形態異常(正常から活性化型へ変化)および正常のアストロサイト減少に加え、アクアポリン4発現低下も認め、その後いずれも回復は認められなかった。拡張不全型心不全モデルでは、6週にアクアポリン4発現低下から12週にはアストロサイト形態変化(正常から活性化型へ変化)を、16週には正常アストロサイトの減少を認めた。重症心不全モデルでは、2週にはアストロサイト形態変化(正常から活性化型へ変化)・正常アストロサイト減少を認め、アクアポリン4は2週の時点で収縮不全型や拡張不全型に比べ劇的な発現低下を認めた。これらの結果から、心不全発症早期よりアクアポリン4の発現低下がアストロサイト形態変化・減少に先行もしくは同時期に起こっていることが明らかとなった。現在、グリンパティックシステムの機能評価を各モデル・各評価時期において実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は慢性心不全におけるグリンパティックシステムの時空間的解析を行う計画であった。予定している各心不全モデル動物の評価時期において、計画していた脳の部位におけるアストロサイトおよびアクアポリン4の変化は評価を行うことができた。現在、グリンパティックシステムの機能評価を行っており、各心不全モデル動物の予定している評価時期全てが終了してはいないが、手法はすでに行ってきているものであり、進捗状況は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、グリンパティックシステムの機能評価終了後に、脳内アクアポリン4阻害による容量負荷時の脳内環境および循環恒常性への影響を評価する。正常ラットにアクアポリン4阻害薬を脳室内持続投与を行い、経口塩分負荷を行うことで循環動態がどのように変化するかを検討する。予想としては、脳内アクアポリン4を阻害することでグリンパティックシステムが機能不全となり、心不全のような、容量負荷に対する循環恒常性破綻をきたすと考えている。また、脳内アクアポリン4を阻害しグリンパティックシステムを機能不全にすることで、アストロサイトの形態や数、脳内環境(酸化ストレスや炎症性サイトカイン)がどのように変化するかも検討する。
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Causes of Carryover |
計画していた学会出張が全てオンライン開催となり、旅費の出費が一切なくなったことと、ラット用テレメトリー送信機の価格が最終的に安価となり、27,717円の次年度使用額が生じた。2021年度に、実験に関する物品代において、試薬(免疫染色の用いる抗体)が予定よりも多く必要になるため、その購入費に当てる。
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