2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K08413
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
瀬口 理 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 客員研究員 (60570869)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 2次性心筋症 / 補助人工心臓 / 心臓移植 / 膜型人工肺 / 劇症型心筋炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究成果を文献化したものを中心に以下に示す。 ①:経皮的膜型人工肺(ECMO)を装着した症例における肺うっ血、肺合併症が予後にどのように影響するかについてまとめた研究報告を、ヨーロッパの人工臓器学会誌である『Artificial Organs』に発表した。本研究ではECMO装着症例において高率に肺合併症を認めることと、肺合併症が予後予測因子であることを示している。本研究の対象症例の約半数に本研究課題のテーマである希少心筋疾患の劇症型心筋炎が含まれており、 劇症型心筋炎に代表される急性心原性ショックを呈する可能性のある疾患の診療の一助となる新たな知見を示すことができた。(論文題名:Prognostic impact of lung computed tomography density in cardiogenic shock patients with veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation. Artif Organs. 2023 Nov;47(11):1742-1751.) ②:本邦独特の心臓移植診療の現実として高齢ドナー心を用いた心臓移植の経過についてまとめた研究報告を、国際心肺移植学会の学術雑誌である『JHLT open』に発表した。この報告は希少心筋疾患との関連性は薄いものの、本邦固有の高齢者ドナーを用いた心臓移植の予後やドナー心の心機能について詳細に解析し、一定以上の予後が期待されることを報告しており、本邦の心臓移植医療を前向きに進める結果であった。さらには今後の我々の研究課題の引用文献となる論文と位置付けている。(論文題名:Heart transplantation with super-aged donors older than 65>years.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示すように、研究成果①は希少心筋疾患である劇症型心筋炎を含む心原性ショック症例の予後改善に寄与する研究報告となっている。これまで心原性ショック症例に対する予後検討の報告では肝腎機能に焦点を置いたものが多く、肺病変をテーマとした点で希少性の高い報告となっている。今後は本研究報告で取り上げたCT画像に基づく肺病変の定量的評価方法と既存の肝腎機能の重症度を組み合わせる形でより精度を高くした形での予後評価が可能になるかどうかについて検討していくこととしている。 研究成果②では日本の特殊な移植医療を背景とした高齢ドナー心移植の予後や心機能の経過についてまとめた。ドナー不足の観点から本邦の心臓移植数に限りがある状況ではあるが、本研究報告は高齢ドナー心移植であっても一定程度の予後が担保されるとの内容であり、日本の重症心不全診療をより積極的に推し進める結果となっている。 以上より本研究課題の進捗状況に関して総合的に「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題の主題は希少心筋疾患を基礎疾患とする重症心不全症例の診療指針を確立することであり、一昨年、昨年度までに筋ジストロフィー、ダノン病、心筋炎、拡張相肥大型心筋症、先天代謝異常症、劇症型心筋炎に続発する心筋症に対する研究ならびに症例報告を発表するに至った。 今後の研究の進捗方策についてはこれまでと同様に希少心筋疾患を対象とした観察研究や症例報告を行ってゆくとともに、研究最終年である今年度は本邦での重症心不全診療の拡大を目指し、心臓移植医療、人工心臓医療について疾患にとらわれない研究課題に対しても取り組んでいくこととしている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために学会参加に制限があったため次年度使用額が生じた。今後はこれまでのデータに基づき論文発表を積極的に行ってゆく。
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Research Products
(2 results)