2021 Fiscal Year Research-status Report
心臓・血管前駆細胞の移動異常に着目した大動脈縮窄症の成因機序究明と治療標的の開発
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20K08458
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
牧野 伸司 慶應義塾大学, 保健管理センター(日吉), 准教授 (20306707)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 小型魚類 / 先天性心疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈管は胎生期に肺動脈と大動脈とを連結する血管である。胎生期より血管組織の構築の変化が生じることで、出生後に動脈管が閉塞する。動脈管閉塞の制御機構として血管内皮細胞下への細胞外基質の貯留と中膜の平滑筋細胞の遊走が重要である。 我々は心・血管腔の形成に表現型をもつメダカ突然変異体を用いて、血管腔の形成機序を解明したいと考え、化学変異剤のENUを用いた心臓前駆細胞移動に異常を呈するメダカスクリーニングに世界に先駆けて成功した。 Linear Heart Tube:lht ホモ変異体は、心臓・血管腔が形成されず、心臓が一本の管の状態で発生が停止する特徴から命名を行った。この表現型は、心臓・血管の前駆細胞が移動できないことによる奇形であることを発見した。このような表現型を呈する突然変異体動物は、これまでに報告がない。この突然変異体の原因遺伝子のバーシカンと表現型を結ぶ分子機序解明を行うことで、「心臓前駆細胞の移動」に伴う先天性心疾患の表現型多様性を生じる成因を紐解くことができると考えて研究を進めている。この表現型の原因遺伝子は、バーシカンというプロテオグリカンである。プロテオグリカンは循環器系前駆細胞の細胞外マトリックスの主要成分であり、多様な分子群を結集し組織構築に寄与することを発見した。バーシカンは細胞外マトリックスで生物活性など持たない物理的な支えと考えられてきたが、我々の実験成果から細胞の移動を能動的に制御していることが分かってきた。ADAMTS(バーシカン分解酵素)切断抵抗性バーシカンノックインマウスによって、大動脈縮窄症と同時に発症してくる先天性心疾患に共通する心臓前駆細胞の移動の異常に伴う先天性心疾患の多様性が生じる機序を統合的に理解することを考えて研究を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、保健管理センターの本務である感染防止対策やコロナ患者対応が多忙となったこと。緊急事態宣言の影響で研究を実施できない期間があったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
動脈管閉鎖の制御機構を明らかにする。特に動脈管の内膜肥厚形成の初期変化、つまり内皮細胞への細胞外基質貯留と中膜の平滑筋細胞が血管内腔面に向かって遊走する部分の分子機序について究明する。中膜の平滑筋細胞が血管内腔面に向かって遊走する距離の違いは、同一遺伝子の変異による表現型の多様性に結びつくと考えられる。メダカで可視化された4次元的イメージを確立してADAMTS切断抵抗性バーシカンノックインマウスと同時に解析を行うことで種を超えた現象であることを証明していく。これまでに例がない表現型を呈する変異体の表現型の多様性に至る機能解析を生体内で行うことができる状況である。ADAMTS切断抵抗性バーシカンノックインマウスの動脈管の解析を進めている状況である。この解析を通して大動脈縮窄症に合併する心室中隔欠損、大動脈二尖弁、心房中隔欠損などの病態形成過程の知られていなかった共通するメカニズムを解明していく。動脈管の内膜肥厚形成を含め、解剖学的閉鎖の分子機序を明らかにすることによって、従来の血管拡張収縮制御機序に基ずく治療法とは異なる、新たな治療法の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大に伴い、対面での学術集会が全てオンライン開催となった関係で旅費等の支出がなくなった。2022年度中に感染が収束した際には成果の発表のための旅費として使用する予定である。
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