2020 Fiscal Year Research-status Report
スプライシング制御因子Rbm20変異による心臓病態メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K08467
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
井原 健介 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (50770210)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 拡張型心筋症 / Rbm20 |
Outline of Annual Research Achievements |
スプライシング制御因子RBM20の変異はタイチン(TTN)遺伝子などの標的遺伝子のスプライシング異常を介して拡張型心筋症(DCM)を生じ、RBM20変異によるDCMは他の原因によるDCMと比較してより重症となる。RBM20変異によるDCM症例において変異が集中するRSRSP配列がRBM20の核移行に重要でありことは知られているが、RBM20の核移行能の障害とDCM表現型との関連は明らかでない。 そこでDCM家系で見出されたRSRSP配列のミスセンス変異を模したRbm20S637Aノックイン(KI)マウスを用いて心臓表現型解析を行ったところ、Rbm20ノックアウト(KO)マウスが軽度の心機能低下を示すのみに対して、Rbm20 KIマウスはさらに重篤な心機能低下や心室性不整脈・心房細動を呈することを見出した。Rbm20 KOマウスとRbm20 KIマウスでの標的遺伝子のスプライシング異常を検討すると、両者とも完全にスプライシング制御能は欠損していた。さらに網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、野生型とRbm20 KOマウスと比較して、Rbm20 KIマウスでは遺伝子発現プロファイルが大きく異なっており、骨格筋遺伝子の発現亢進や遺伝性不整脈関連遺伝子の発現低下が見られた。 両者の違いはRbm20 KIマウスでは細胞質に核移行できないRBM20(S637A)が存在することであり、組織学的評価ではRBM20S637Aタンパクは細胞質で凝縮体を形成していることが明らかとなった。この凝縮体が遺伝子発現プロファイルの変容そして重症DCM発現に寄与していると考えられ、更なる検討を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の主要な実験の一つであるUV架橋免疫沈降実験の条件設定が、想定以上に困難であり、時間を要している。 加えてコロナ感染拡大による研究活動制限の影響が少なくない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、UV架橋免疫沈降実験を進め、細胞質での変異型RBM20の標的RNAを明らかにしたい。 さらに、細胞質RBM20が形成する凝縮体は、液-液相分離に基づくdroplet(生体分子凝縮体, biomolecular condensate)を形成していると考えられ、凝縮体の性質の検討および、液-液相分離による細胞機能変質に関しても検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により実施予定であった実験が施行できておらず、当該年度計上していた次世代シークエンス費用を翌年度に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)