2023 Fiscal Year Research-status Report
移植後心のMRI心筋ストレイン/4Dフロー運動エネルギーによる慢性炎症評価法開発
Project/Area Number |
20K08471
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井手 盛子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (90624247)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脳死下心臓移植 / 心臓MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
研究4年目にあたる当該年度は、前年度に引き続き心移植術後8週、1年、2年、3年、5年、10年にあたる時期に心筋生検を含む心臓カテーテル検査目的にて入院す る患者に対して、検査枠が許す可能な範囲で、検査入院期間中に心臓MRIを行った。それぞれの検査時には、研究実施計画に従い、新しい撮像法である4D flow法 を含めた計画通りの様々な撮像を問題なく終了している。4D flow法による心腔内エネルギーの定量については、流体力学に基づいた評価法を用いて大阪大学基礎工学部と共同で探索を進めていたが、安定して測定可能となった。測定の結果、移植心において運動エネルギーは低下傾向であることが分かったが、妥当性確認のため左心室の簡易形状に対して,cine MRI計測に基づく体積変化を与えて内部の運動エネルギーを評価したところ、4D flowデータからの直接計算値と同様の傾向を示し、妥当性が確認された。 心エコー所見から、移植後心には拡張障害を認めていると思われたため、心エコーパラメータやカテーテルによる心内圧パラメータと、心臓MRI 4D flow法から得られたエネルギー値との関連の有無を検討したところ、一部のパラメータに関連を認める傾向にとどまった。おそらく、症例数が足りない事と、現在の臨床で使用される心臓MRIの時間分解能の限界も有意差がでない一因であると思われた。 そのため今後、心臓の微細な機能変化を表す心筋ストレイン値と心腔内エネルギー値変化との関連や、右心カテーテルによる検査値との関連をより明らかにするために、対象症例数を引き続き収集する。最終的には、心臓MRI検査が侵襲的な心筋生検検査の代替となり移植後患者の負担を軽減する事を目指している。日本での数少ない心移植実施施設として当該研究の本邦での移植後管理における重要性は高いと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画書に従い、心移植術後8週、1年、2年、3年、5年、10年にあたる時期に心筋生検を含む心臓カテーテル検査目的にて入院する患者に対して、検査枠が許す可能な範囲で、検査入院期間中に心臓MRIを行った。申請者施設での心臓MRI検査枠は非常に限りがあるため、入院患者全例に対して心臓MRI検査が困難であった。そのため研究計画当初の予定症例数よりは少ない実施数となっている。検査そのものは心筋生検および心臓MRI共に合併症などの問題なく進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き心移植術後8週、1年、2年、3年、5年、10年にあたる時期に心筋生検を含む心臓カテーテル検査目的にて入院する患者に対して心臓MRI検査を行う。それと並行して心筋生検から得られる組織から算出する心筋線維化率と心臓MRIの線維化パラメータとの比較検討を行い、同時に心腔内のエネルギー値、あるいは右 心カテーテルで得られた圧力データとの関連を探索する。これについては現在あるデータで関連がある傾向を認めているため、引き続き症例数を増やすことによって有意な相関を得られる可能性がある。もし心臓MRIから得られた心筋の経時的構造変化との諸指標との関連が認められなかった場合は、心筋の移植後慢性炎症との関連が疑われている免疫学的因子と心筋性状の変化や構造的変化との関連について検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由の一つとして、謝金を支払っていた対象者の異動により、一昨年度まで認めた解析に伴う人件費を引き続き必要としなかったからと考えられる。
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