2020 Fiscal Year Research-status Report
心内膜心筋生検試料のプロテオーム解析手法の確立と応用
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20K08485
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
若林 真樹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, オープンイノベーションセンター, 室長 (70552024)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プロテオミクス / 翻訳後修飾解析 / 心内膜心筋生検 / FFPE / LC-MS |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)心筋組織のクオリティチェック指標の創出、(2)極微量FFPE組織の翻訳後修飾解析に向けた試料前処理手法の開発に関して研究を実施した。 まず、ホルマリン固定までに要する時間と試料劣化(タンパク質分解)の関係を明らかにするため、マウス心臓組織を摘出後、室温または4℃にて0-24 h静置し、ホルマリン固定を行ったサンプルに関して、比較定量プロテオーム解析を行った。4℃保管した試料に関しては、6時間静置しても顕著な分解は確認されなかった。しかしながら、室温保管では、静置時間3時間であっても明らかに分解し始めるタンパク質が80種以上存在し、24時間後には200以上のタンパク質の分解が顕著となった。これらタンパク質群がヒト心内膜生検FFPE試料のクオリティチェック指標として有用かどうか、今後、実試料による検証を行う予定である。 次に、極微量FFPE試料の翻訳後解析に向けて、チューブやチップを用いた操作を全て省略することで試料ロスを最少化し、分析感度を最大化する手法の開発をすすめた。ガラスキャピラリー内に、リン酸化タンパク質(ペプチド)濃縮用ビーズと疎水性ビーズを連続的に充填し、このキャピラリーに1000細胞相当のHEK細胞のライセートを導入することでリン酸化ペプチドの濃縮を行ったところ、6000種程度のリン酸化サイトの同定に成功した。本手法は以前より構築してきたキャピラリー内でのタンパク質抽出・消化法と容易に組み合わせることが可能で、さらなる感度向上が期待できる。以上の結果より、心内膜生検試料に対しても適用可能な十分な感度を達成できたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前処理手法の開発はおおむね完了し、実試料への応用に先立つクオリティチェック指標の候補選別も進んでいるため、ほぼ計画通りに進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)クオリティチェック指標の有効性の検証 本年度はホルマリン固定までにかかる時間により変動するタンパク質劣化の程度を評価したが、ホルマリン固定という化学修飾自体が引き起こすタンパク質の劣化も評価対象に加える。ホルマリン固定前に起こる分解、ホルマリン固定による化学修飾を受けても量的変化を受けにくいタンパク質群を正規化の基準値として、それぞれの要素が与える影響をクオリティチェック指標とすることを目指す。 (2)試料前処理法のさらなる高感度化 キャピラリー内でのタンパク質抽出・酵素消化法と、本年度構築した翻訳後修飾解析手法を組み合わせることで、分析感度を最大化し、極微量の生検組織からの解析を達成する。 主に上記項目を実施したうえで、実試料のプロテオーム解析と翻訳後修飾解析にも着手する。
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Causes of Carryover |
近年のCOVID-19の情勢により、希望通り入手できない器具類、試薬類が非常に多く、購入を見送った。また、実験動物も希望通りの納入とならなかったため、維持している既存の実験動物を用いた。LCーMS用消耗品に関しては、たまたま通例の交換時期よりも長く維持できたものが多かったため、追加の購入を控えるこができた。しかしながら、次年度は高価なLC-MS消耗品が多数必要となる予定であり、当初申請額に相当する物品の購入もすでに予定しているため、おおむね使用予定は決定している。
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Research Products
(1 results)