2020 Fiscal Year Research-status Report
老化による心機能低下における低分子量Gタンパク質シグナル伝達系の新たな作用機序
Project/Area Number |
20K08489
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
扇田 久和 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50379236)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 老化 / RhoA / 心筋障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
老化により心機能が低下する分子メカニズムを検討するため、本研究では心筋細胞内の重要なシグナル分子である低分子量Gタンパク質RhoAに着目して解析を行った。2020年度は、Cre-loxPシステムを用いて、心筋細胞特異的にRhoAの発現が欠損するコンディショナルノックアウト(cKO)マウスの作製に成功し、そのマウスを長期間飼育した。その結果、コントロールマウスと比較して、RhoA cKOマウスではより早期から心機能が低下した。また、RhoA cKOマウスの心筋では、p16、p21、SA-β-galなどの老化関連遺伝子・マーカーの発現が有意に増加していた。心筋でRhoAの発現が欠損すると心筋の老化が促進されること、すなわち、RhoAが心筋において抗老化因子として作用していることが分かった。 RhoAの主な作用は細胞(心筋細胞を含む)内に存在するアクチン線維の走行・束化を調節し細胞骨格を維持することであるが、RhoA cKOマウスの心筋細胞において、アクチン線維の走行の乱れは軽微であった。一方、RhoA cKOマウスの心筋では、光学顕微鏡での観察で線維化が著明に進行していること、電子顕微鏡での観察でミトコンドリアの形態が異常になっていることを新たに見出した。以上より、RhoAは老化による心筋の変化に抗して、ミトコンドリアの形態を維持し、心筋細胞の傷害から心臓の線維化が増加するのを抑制していると考えられた。 現在、RhoAがミトコンドリアの形態を維持する詳細な分子機構を解析しており、2021年度以降もこの解析を継続することで、老化がもたらす心機能低下においてRhoAが果たしている役割を、ミトコンドリアの形態維持という新たな観点から分子レベルで解明していく。さらにその成果をトランスレーショナル研究につなげられるよう検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心筋特異的にRhoAの発現が欠損するRhoA cKOマウスの作製に成功し、そのマウスの心機能解析を順調に進められていること、さらに、RhoA cKOマウスで老化により心機能低下が促進するメカニズムについても新たな観点から解析を開始できていることより、本研究は「おおむね順調に進展している」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
RhoAがミトコンドリアの形態を制御している分子機構について、1)ミトコンドリアエネルギー代謝において中心的な役割を果たしているATP5Aの発現量や動態、2)ストレス時にしばしば観察されるミトコンドリアFission・Fusion現象、3)異常ミトコンドリアを処理するマイトファジーなどに着目して明らかにしていくことを計画している。 さらに、これらの分子機構がRhoAの直接作用で生じている可能性は低いため、RhoA下流のシグナル分子が関連する機序についても解析する。
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Causes of Carryover |
RhoAコンディショナルノックアウトマウスの作製が想定以上にスムースに進行したため、予定していた金額よりも少額となった。2021年度はマウスの心筋ミトコンドリアの機能解析に多額の費用が必要と想定されるため、2020年度に余った金額をその費用に充当する予定。
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